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2022年9月19日 掲載

「女性の手の痛み」

ホルモン減少が原因に

 手の痛みで整形外科を訪れる方の多くが女性です。代表的な疾患は「ヘバーデン結節」「ばね指」「ドケルバン病」 「手根管症候群」などです。なぜ女性に多いかというと、これらの疾患の原因が、女性ホルモンであるエストロゲンに関連するからです。

 エストロゲンが減少すると、関節や腱(けん)の周りに存在する「滑膜」という組織が腫れてしまいます。関節周囲の滑膜が腫れると痛みが生じ、関節炎を起こします。また、腱周囲の滑膜が腫れると腱の動きが悪くなり、腱鞘(けんしょう)炎を引き起こします。これらの症状は妊娠出産期や更年期の、エストロゲンが変動しやすい年代の女性に多くみられます。

 今回は、女性ホルモンに関連する手の痛みの中でも特に頻度の高い、指と手首の腱鞘炎について紹介します。

 ばね指を知っていますか。指を伸ばしたり曲げたりする際に、手のひら側の指の付け根辺りにガクッとした引っかかり(弾発)が生じ、痛みと手の使いづらさが出てしまう指の腱鞘炎です。親指、中指、薬指、人さし指、小指の順番になりやすいとされています。

 初期症状は朝に指のこわばりや弾発が生じ、手をよく使う日中は少し良くなりますが、使い過ぎて夕方になると、また症状が悪くなります。症状が進行すると指が伸びたまま、または曲がったままで動かなくなってしまいます。手のひら側の指の付け根付近を押すと痛みが生じ、指の曲げ伸ばしをする際に指がガクッと引っかかる場合はばね指の可能性が高いです。

 次にドケルバン病です。名前だけ聞くと怖い印象を受けるかもしれませんが、手首の腱鞘炎のことです。手首を使う際に手首の親指側に痛みが出ます。仕事や生活で手をよく使う方がなりやすく、特にお子さんやお孫さんを抱くことの多い女性に多くみられます。

 診断では、親指をそれ以外の4本指でギュッと握り、そのまま手首を小指側に強く曲げます。手首の親指側に痛みが出る場合はドケルバン病の可能性が高くなります。

 ばね指もドケルバン病も、整形外科で行われる一般的な治療は、内服や注射でまず炎症を抑え、ストレッチで再発予防を行います。それでも再発を繰り返す場合や状態が改善しない場合は手術療法を検討します。

 その他の治療として近年注目されているのが、大豆イソフラボンの摂取です。これらの疾患は女性ホルモンであるエストロゲンの減少が原因となるため、エストロゲンと似た働きをする大豆イソフラボンを摂取することで、疼(とう)痛緩和の一定の効果が期待できます。大豆イソフラボンはサプリメントでの摂取や、食べ物で摂取する場合は豆腐、納豆、豆乳、油揚げ、きな粉、みそなどに多く含まれています。

 もちろん痛みが強く、仕事や生活に大きな支障が出ている場合は、早めに整形外科を受診する必要があります。痛みや症状があっても病院を受診するほどではない方は、簡単ですぐにできるサプリメントや大豆製品の摂取をまず試してみてはいかがでしょうか。

 五十肩という言葉を最初に用いたのは、江戸時代の俗語を集めた書物「俚言集覧(りげんしゅうらん)」とされています。当時の50歳は大変長生きで「長生き病」といったニュアンスで使われていました。ですが、あまりに言葉が有名になり過ぎて、患者や家族、医療従事者までが軽くみる傾向にあります。実は肩の中の腱(けん)が切れていたりと、いろいろな病態の可能性があります。症状が強い場合、続く場合は特に整形外科の受診を考えましょう。

(諌早市多良見町)たけさこ整形外科 院長  竹迫 久享

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