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2022年10月3日 掲載

「ドライアイ」

まばたき減少 空調も影響

 涙は上まぶたのやや外側にある「涙腺」といわれるところで作られ、起きている間は意識せずに行っている「まばた き」をすることで、目の表面に行き渡ります。涙は目の表面を潤した後、約10%は蒸発し、残りの約90%は目の内側にある小さな穴「涙点」から小さな管を通って、鼻の方に排出されていきます。

 涙の役目は 目の表面を乾燥から守る 角膜(くろめ)に栄養や酸素を供給する ばい菌などの侵入や感染を防ぐ 目に付着したごみやほこりを洗い流す 角膜の表面を滑らかにする−ことです。

 涙はわずか1000分の7ミリの薄い膜ですが、「油層」と「液層」といわれる二つの層からできています。「油層 」はコップに油を1滴垂らしたときのように、薄い膜を張って涙の表面をカバーし、涙の蒸発を抑える働きがあります。「液層」は涙の主役であり、水分とムチンで主に構成されています。角膜への栄養補給を行い、涙が目の表面にしっ かりと粘着するように、のりのような役目を果たしています。

 涙が目の表面を潤すという大切な役割を果たしてくれているからこそ、目が透明性を保つことができます。表面の凸凹を滑らかにすることで光が乱れることなく入り、その情報が脳に伝達され、物がくっきりと見えるのです。

 涙の量が減少したり、涙の質のバランスが崩れたりすると「ドライアイ」が発症します。「目が乾燥する」といった症状で来院する患者は少なく 目がつかれる ゴロゴロする 充血しやすい かすんで見える コンタクトを装用した ら痛い−などが多いようです。

 スマートフォンやパソコンを長時間使用する生活では、まばたきは通常の3分の1に減り、現代の室内は冷暖房などの空調によって乾燥しがちです。涙の分泌は主に、リラックスしたときに優位になる副交感神経に支配されていますが、交感神経が優位(緊張したとき)になると減少するため、ストレス社会では分泌が抑制されているのでは?という考えも出ています。

 このほかコンタクトの長時間の装用、食生活の変化、車使用の増加やリモートワークによる運動不足、加齢に伴う涙液の減少や安定性の低下も、ドライアイを加速しているのではないかといわれています。

 以前行われた日本人対象の疫学調査によれば、40歳以上の成人の約17%以上がドライアイであったという結果があります。オフィスワーカーを対象とした調査では、60%以上がドライアイ、もしくはその疑いありということがわかっています。

 ドライアイの治療は点眼治療が主になり、目に潤いを与える点眼や、涙の主成分である水分やムチンを出す働きの点眼を処方することが多いです。しかし、重症だと涙が排出される穴(涙点)をふさぐ「涙点プラグ」(液体コラーゲンやシリコン)などが必要になります。目がつかれる、ゴロゴロする、充血しやすいなどの症状がある人は一度、眼科を受診されてみてはいかがでしょうか?。

(長崎市宝栄町)田中外科眼科クリニック 医師  田中 ともゑ

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