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2022年10月17日 掲載

「指が白くなったら?」

膠原病初期症状の恐れ

 秋も本格化してきて、朝晩に冷え込むようになってきました。読者の皆さんの中で、冷たいものに触ったときや冬の外気に触れたときなどに、指が真っ白になる人はいないでしょうか?
おそらく、指を温めると紫色に変わって、その後真っ赤になった後、元の色に戻るものと思われます。

 これを「レイノー徴候」といいます。指の血管が寒冷刺激などによって一時的に攣縮(れんしゅく)(けいれん性の収縮)し虚血となって、復温によって再度血液が還流し、何事もなかったかのように元に戻る現象です。レイノー徴候があると、痛みがあったり指先の動きが鈍くなったりする上に、真っ白な指という見た目の問題を生じます。それだけでなく、全身の免疫疾患である膠原(こうげん)病の初期のサインである可能性があります。

 特に全身性強皮症と呼ばれる、指先をはじめとした全身の皮膚が硬くなる膠原病においては、50%の人が発症時に、90%の人が経過中にレイノー徴候を経験します。全身性強皮症の症状程度は患者さんによってさまざまですが、皮膚硬化やレイノー徴候に加え、間質性肺炎(肺の小さな空気袋である肺胞間の炎症)や肺高血圧症(肺に向かう血管である肺動脈の血圧上昇)など、全身各所の臓器の障害が引き起こされます。

 皮膚科診療をしていると、「指先が白くなる」と訴えて来院され、全身性強皮症の診断に至る患者さんにたびたび遭遇します。これらの患者さんは、早期診断によって、他臓器病変の症状が顔を出す前から予防・治療を開始できるかもしれません。

 ほかにも指先には、膠原病などの全身疾患を疑うサインがあります。爪の根元には爪上皮(甘皮)と呼ばれる皮膚とつながる薄い膜があります。そこに黒色の小さな点が複数の指で見られることがあります。これらの多くは小さな血管から出血した痕であり、「爪上皮出血点」と呼ばれます。また、痛みや腫れはないのに、爪の周りの皮膚がにじんだような赤みを帯びることがあり、これは「爪囲(そうい)紅斑」と呼ばれます。

 どちらも膠原病でよく見られる指先の所見です。レイノー症状と爪上皮出血点が同時にあれば、全身性強皮症をより疑います。爪囲紅斑は、皮膚筋炎や全身性エリテマトーデスと呼ばれる膠原病を疑うサインです。

 これら以外にも、指先は早期にさまざまなサインを出すことによって、病気の早期診断・治療に導いてくれます。かびの感染症である爪白癬(はくせん)や、細菌感染症のひょう疽(そ)など、治療方針が全く異なる疾患のこともあるので注意が必要です。指先の異常で気付いたことがあったら、お近くの皮膚科専門医へ受診を検討してみましょう。

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 「皮膚の日」(11月12日)にちなんだ講演会が11月19日午後3時からウェブ配信で開かれ、長崎大学病院皮 膚科・アレルギー科の室田浩之教授がアトピー性皮膚炎について講演します。誰でも聴講可能。詳しくはお近くの皮膚 科にお問い合わせください。

(長崎市坂本1丁目)長崎大学病院皮膚科・アレルギー科 講師  小池 雄太

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