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2022年12月5日 掲載

「がんと言われても慌てずに」

1人で悩まず相談を

 日本人は2人に1人が生涯にがんになるとされています。つまり、珍しい病気ではなく、あなたの周りの人やあなた 自身が経験する可能性が高い疾患です。

 がんは悪性のできものの総称です。医学的に、悪性とは命にかかわることを指しますので、がんと診断されるのは嫌なことですし、ショックを受けることでしょう。人は怖いものや嫌なものを避けようとしますが、知らないということが恐れを増幅させます。そのショックを和らげやすくするために、がんの専門医として、知ってほしいことをいくつかお話しします。

 どんな冷静な人でも、自分や大切な人に起きた、あるいは、起こるであろう嫌なことを聞くと、少なからず動揺します。そのような場には1人で立ち向かわないことが最も大事です。相談できる人を伴い、担当医師らの話を聞きましょう。もし、初回の説明時に同席でなかった場合は、同席できるときにもう一度話を聞く機会を設けてもらうのもよいことです。

 話を聞くときはぜひメモをとってください。後から思い返すことも容易になります。相談する人が思いつかず、1人で話を聞いたときなどは、がん相談支援センターに立ち寄り、相談員と話をしてみるのもよい方法です。当院を含むがん拠点病院には、がん相談支援センターが設置されており、よろず相談を受けることができます。がん拠点病院にかかっていなくても、相談だけを行うこともできます。

 次に、自分(大切な人)のがんの情報を正しく得ましょう。がんという名前でひとくくりにされた疾患群ですが、具体的には、発生した臓器の名前を冠して病名があります。大腸に、肺に、乳房にと発生すると、それぞれ大腸がん、肺がん、乳がんと名が付きます。おおもとがどこから発生したがんであるかによって、進行しやすさや治療法が異なります。

 どの程度進んだ状態にあるかの把握も重要です。がんにまではなっていない前がん病変、がんになってまだ早い時期の早期がん、大きくなってきた段階の進行がん、ほかの部位(臓器など)にまで飛び火した転移がんと進んできます。

 前がん病変、早期がんは治してしまうことも期待できます。進行するにつれ、体に不都合ないろいろな症状を起こしたり、命にかかわりやすくなったりします。飛び火が多くある転移がんでは治してしまうことが難しくなりますが、治療法の開発は日進月歩ですので、がんの主治医と相談して治療法を考えましょう。かかりつけ医に相談したり、ほかの専門医の意見を聞くセカンドオピニオン外来を利用したりすることも、考えをまとめるよい手助けとなります。

 今働いている人は仕事を辞めないようにしましょう。闘病中に働ける場合や、治療が終わってから働けることがあり得るからです。闘病にも生活にもお金はかかりますし、経済的心配は少ない方がいいです。

 がんと言われても慌てず、1人で悩まず誰かに相談してみましょう。相談することで、自分の考えがまとまりやすくなります。

(長崎市新地町)長崎みなとメディカルセンター がん診療統括センター長  峯孝 志

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