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2023年1月16日 掲載

「インフル、コロナの同時流行」

症状区別は困難、感染対策継続を

 日冬はアトピー性皮膚炎が悪化しやすい時季です。冬の低湿度環境は皮膚から水分を奪い、皮膚のバリアー機能を低下させます。バリアー機能が低下するとそこからさまざまなアレルゲンが侵入し、炎症が起き、痒(かゆ)みが生じてくることが知られています。痒みにより皮膚をかくことでさらに炎症が生じるという悪循環が形成されていきます。

 アトピー性皮膚炎の治療は皮膚の保護、保湿、抗炎症治療、洗浄のほか、悪化因子の除去、合併症の治療が必要になります。今回はその中でアトピー性皮膚炎の外用薬について解説します。

 アトピー性皮膚炎で使われる外用薬で代表的なものは角質の乾燥を改善する保湿外用薬と、炎症を抑えるステロイド外用薬とになります。

 こうした外用薬を使うときにまず重要な点があります。それは外用薬の塗り方です。成人の指1関節分(2〜2・5センチ程度)で手のひら2枚分の面積に塗るという塗り方が適量です。その際、「肌に乗せるように」塗ることが重要になります。これはティッシュが張り付くくらいの塗り方になります。化粧水のように丁寧に擦り込むような塗り方はしないでください。この基本的な塗り方ができていないといつまでたっても皮膚は改善しません。

 この塗り方で、例えば生後6カ月児に1日1回、全身に外用薬を使用した場合に必要となる量は月に約100グラムとなります。多く感じますが、アトピー性皮膚炎の治療ではこのくらいの量が必要になります。

 次に重要なことは塗る頻度です。多くの人は見た目が改善し、痒みが減ったところで塗るのをやめてしまい、しばらくして再燃するというのを繰り返しています。

 アトピー性皮膚炎治療の基本は「プロアクティブ療法」といわれる方法で皮膚に残る見えない炎症を鎮めていく治療です。初期はステロイドなどの抗炎症外用薬を1日2回塗り、改善してきたら1日1回に減らします。皮膚の発赤や痒みがなくなれば2日に1回にして数週間、良い状態が維持されていれば3日に1回にして数週間、と少しずつ減らしな がら継続的な治療を続けていきます。こうすることでステロイドを連日使用することなく、長期間皮膚の良い状態を保つことができます。

 ステロイド外用治療は確かに、大量に長期使用をする場合には局所または全身性の副作用を生じることがあり、不安感を持つ人もいます。現在ではステロイドと異なる作用の仕組みで炎症や痒みを抑えるタクロリムス、デルゴシチニブといった外用薬も使用されるようになっています。これらを用いたプロアクティブ療法を行うことで、ステロイド副作用を減らしつつ、効果的で安全な治療を継続することができます。

 現在アトピー性皮膚炎が悪化している場合には、ステロイド外用薬と保湿剤の十分な塗布、タクロリムスやデルゴシチニブへの変更や併用、プロアクティブ療法の導入をかかりつけの先生と相談し、きれいな皮膚で春を迎えましょう。

(長崎市本原町)中山小児科クリニック 副院長  中山 裕介

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