長崎新聞健康欄
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2007年7月16日掲載

水泳と耳鼻咽喉科の病気

 最近は老若男女を問わず、多くの人がスイミングクラブに入り、泳ぐのを習慣にしています。特にこれからの季節は普段、泳がない人もプールや海に行く機会が多くなるでしょう。そこで今回は水泳と耳鼻咽喉(いんこう)科の病気の関連について説明します。

 耳あかは少量の時は気にする必要はありませんが、耳の穴をふさいで詰まった感じがあるくらいなら、泳ぐ前に取っておきましょう。学校健診で耳垢栓塞(じこうせんそく)と診断されたら、必ず耳鼻科を受診してください。そのままですと、外耳道炎を起こし、痛みやはれが出ることがあります。

 急性中耳炎はほとんど風邪症状と一緒に出ますが、風邪はもちろん中耳炎が治るまで水泳は禁止です。中耳炎は外耳道から水が入って起こると誤解している人がいますが、本当は中耳と鼻腔(びこう)をつなぐ耳管という所を通って細菌が耳に入り込み炎症を起こします。だから鼻風邪のときに中耳炎が起こりやすくなるのです。

 鼓膜に穴が開いていて、時々、耳垂れのある病態を慢性中耳炎といいます。耳垂れが多いときや痛みがあるときは水泳は避け、治療に専念する方が良いでしょう。

 三−五歳の小児に多い、中耳に水がたまる「滲出(しんしゅつ)性中耳炎」はいろいろな意見がありますが、医師の治療を受けている場合には水泳が特に治癒を遅らせたり、病状を悪化させたりすることはないようです。

 水泳で耳に水が入ったときは片足で軽くジャンプしたりすれば取れますし、少量であればそのまま体温で乾燥します。耳が詰まった感じが続くときは耳鼻科を受診してください。鼓膜の周辺に水が残っている場合があります。

 次に鼻の病気について説明します。急性鼻炎、いわゆる鼻風邪は、鼻詰まりからのどの痛み、せきと進むこともありますので、しっかり治してから泳ぎましょう。

 鼻水、鼻詰まりが長く続く慢性副鼻腔炎の場合、症状が軽い時期は問題ないと思いますが、鼻水が濃く多くなり、ほお部分の痛みなどが出る急性増悪期は水泳を中止して治療します。

 アレルギー性鼻炎は花粉や家ダニで起こります。プールの水の中にはアレルギー反応を引き起こす物質はありませんが、水泳で体が冷えたときに鼻症状が悪化することはあります。泳いだ後に鼻水、鼻詰まりがひどくなる人は主治医に相談してください。

 以上、幾つかの病気と水泳の可否について簡単に話しました。実際は同じ病気でも重症度が違うし、外的な刺激に対する反応の個人差もありますので、医師に相談してアドバイスを受ける方が良いでしょう。そうしておくと仮に症状が悪化しても治療がスムーズにいきます。病気を上手にコントロールし、水に親しんで長い夏を元気に過ごしてください。

(長崎市ダイヤランド四丁目、むらしま耳鼻咽喉科院長 村嶋 龍太郎)
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