病気一口メモ

みぞおちの痛み

東彼医師会  田渕 純宏(川棚町)



に言う「みぞおち」とは、臍の上部のややくぼんだところで医学的には心窩部(しんかぶ)と称します。
 腹痛の中でも比較的多くの方が経験されたことがある痛みかと思います。今回は心窩部痛を来す病気について簡単に説明します。
 もっとも頻度が多いのは@胃・十二指腸潰瘍・胃癌をはじめとする胃腫瘍などがあげられます。
 痛みに関する個人差は大きく、必ずしも潰瘍の方が胃炎より痛みが強いということではありません。軽い胃炎でも強い痛みを感じる方がいらっしゃる一方で、まれには潰瘍から大量に出血し吐血したり、潰瘍が穿孔(穴が開いてしまう)して腹膜炎を起こすまで痛みを感じない方まで多岐にわたります。
 吐血したときはもちろん、黒っぽい便が出た時は十二指腸潰瘍からの出血を強く疑うべきですし、突然の心窩部痛は潰瘍の穿孔も考えなくてはいけません。
 癌に関しては近い将来、治療薬の開発が有望視されていますが、現時点では早期発見・早期治療に勝るものはありません。
 早期の癌であれば内視鏡(胃カメラ)や腹腔鏡での手術も可能です。内視鏡の検査は3〜5分で終わります。年に1回検査を受けることにより癌も怖い病気ではなくなることをご理解ください。

A膵臓の病気について

 膵臓は胃の裏側(背中側)にあり、みぞおちを中心に右側腹部から左側腹部に及ぶ臓器です。膵炎の場合は腹痛とともに背部痛を認めることが多く、原因としてアルコール性や胆石のよるものが大半ですが、はっきりした原因がない場合も20%程度あります。
 診断は、血液や尿中のアミラーゼを測定したり、腹部超音波検査やCT検査などにより比較的容易につきますし、治療もほとんどは絶食や薬物療法など内科的治療で治りますが、まれには外科的緊急手術を要する重症膵炎や腫瘍、膵石を合併している場合もあり注意を要します。

B
急性中垂炎の場合も最初は心窩部痛を訴えることが多く、症状の進行とともに次第に右下腹部に痛みが限局してきます。ジャンプしたり歩いたりすると右下腹部に痛みが走り、前屈位になるようであれば手術を要すると考えた方がいいようです。

C
狭心症や心筋梗塞でも「胃が痛い」と言って外来を訪れる方があります。
このような心臓の痛み・病気は一刻を争う場合が多く、特に注意を要します。痛みの症状や心電図で容易に判断はつきます。
 心窩部痛を来す主な病気について簡単に述べました。
突然起こる心窩部痛には一命にかかわる場合がありますので特にご注意ください。

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