病気一口メモ

『統合失調症について』

東彼杵郡医師会    小鳥居

 


  統合失調症は以前の「精神分裂症」という病名の印象から「治らない不治の病」「精神が分裂する恐ろしい病気」などと誤った認識で捉えられることもあります。しかし、約100人に1人の割合で発症する精神疾患において代表的な疾患であり、最近では病気に対する研究の進歩や様々な治療法の確立により治療は飛躍的に進歩しています。早期に専門医の適切な治療を受ければ、多くの患者さんは社会に復帰することが可能です。

 統合失調症は脳の刺激伝達物質のドーパミンなどの神経ネットワークにトラブルが生じる脳の機能障害による病気です。症状は、「幻覚妄想などの陽性症状」「引きこもりや勘定鈍麻などの陰性症状」「記憶力の低下や融通性の定価などの作業能力の低下」などがあります

 治療は「薬物療法」および「精神療法」を通信に、治療の過程や経過に応じて「作業・レクリエーション療法」や「精神化リハビリテーション」などが行われます。

 治療の中心となる薬物療法の変遷としては、約50年前よりクロルプロマジンやハロペリドールに代表される定型抗精神病が次々と開発されました。これら定型抗精神病薬は幻覚妄想などの陽性症状に優れた効果を発揮し日常診療に大きな進歩をもたらせました。しかし、陰性症状への効果が不十分で、衰退外路系副作用や認知機能を低下させるなどの副作用がありました。その後に登場したオランザピンやリスペリドンといった非定型抗精神病薬は副作用も少なく、現在の統合失調症の薬物療法の中心となっております。

 以前の治療法は入院中心でしたが、現在は社会復帰を考慮し外来中心の治療となっております。

 最近の研究では、出来るだけ早期に初期治療を開始する事で寛解状態に達する患者さんが増え、社会機能低下・治療抵抗性・認知機能障害・脳萎縮進行の防止などが期待できるとの報告があります。以前に比べると、軽症の段階から精神科に受診される患者さんは増えております。今後は更に、精神疾患に対する偏見がなくなり、また、早期受診していただける環境が整う事で、1人でも多くの精神疾患を持つ患者さんがその人らしいライフワークを営んでいただける事を望んでおります。

 

 


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