病気一口メモ

『脳深部刺激による、パーキンソン病の治療』

東彼杵郡医師会 長崎神経診療センター   浦崎 永一郎

 


 

手足を含めた身体の動きは脳野中で発生した信号がバランスよく伝わって円滑に出来るようになっています。この信号伝達を円滑にするドーパミンという物質が不足した状態がパーキンソン病で、手が振るえ、身体が硬く、動きが乏しく、歩行などがうまくできなくなります。この治療として最近注目されているのが脳深部刺激という方法です。

 パーキンソン病治療の原則はドーパミンの働きをおぎなう薬物療法です。しかし、しばらくして「薬の効きが持続しない、すなわち効果が見られる時間が短くなるため症状がしょっちゅう急に悪くなる。かといって薬の量を増やすと副作用による異常運動などが出て困る」状態になった場合には外科治療の出番です。

 具体的には薬の効果が切れたときに日常生活で介助が必要になるまで悪化するなら手術を考慮してよいと思われます。外科治療によって薬の効果が急に切れて症状が悪くなるのを防ぎ(薬の効果を「底上げ」するといいます)、薬が効きやすくなると投与量が減って(薬の「肩代わり」効果)、薬による副作用も減るというわけです。ただし「手足のふるえ」については、他の症状の軽重とは別にそれ自体で不都合が生じるなら手術の適応がありますし効果もかなり見られます。外科治療はパーキンソン病そのものを根治するわけではありませんが、上記の適応内にあれば困っている症状の軽減に大きく寄与します。(実はこの手術はパーキンソン病以外の激しい震えや手足が勝手にねじれるジストニアという異常運動の一部にも有用です。)

 手術は治療すべき脳深部の場所に電極を設置して電気刺激する方法で、胸の皮膚の下に心臓ペースメーカーと同様のバッテリーを入れます。(図1)。

 図1

 画期的な方法ですが、手術の効果を得るには確実な診断と手技が必要ですので神経内科と脳神経外科の協力体制が重要です。長崎神経医療センターでは手術の精度を上げるための特殊な機器をそろえ、県下でははじめてこの外科治療が出来るようになりました。今回紹介した脳深部刺激療法については、まずかかりつけ医の先生にご相談の上、長崎神経診療センターの神経内科外来へおこし下さい。

 

 


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