病気一口メモ

運動器不安定症

東彼杵郡医師会    実松 義昭

 


 

運動器不安定症という言葉は、最近よく耳にするところですが、その意味は「高齢化に伴い、バランス及び移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもりや転倒の危険が高まった状態」をいいます。

 このような状態を引き起こす原因としては、主として、脊髄圧迫骨折、大腿骨頚部骨折、骨粗鬆症、変形性関節症、腰部脊柱管狭窄症(症状は、長く続けて歩くと途中で休まなければ歩けなくなったり、また、坐骨神経痛などを起こす)などがあります。

 そして、これらにかかったことがあるか、あるいは現在かかっている人で、眼を開けて片足で立っていられる時間が15秒未満か、もう一つは、イスに座って立ち上がり、3m先まで行って再びもどり、イスに座るまでの時間が11秒以上かかる人が該当します。

 こういう状態になるのを予防するための運動が最近盛んに行われるようになってきました。

 しかし、加齢により、多くの方が何らかの障害を持っておられ、みな同じような運動をしても症状が増悪される方もおられると思います。

 そこで、膝や腰に疾患のある方を3組に分けてどういう運動がいいか考えました。

 @膝・腰があまり悪くない人は、健康上からも歩行が一番よいかと思います。さらに、筋力増強も考えて、軽くスクワットをするか、イスに座ってたつ訓練をする。(これは前になにか安定したつかまるものがあった方が良い)。

 A中等座の膝・腰の悪い人は、適当な距離の歩行と四頭筋訓練をすすめます( 500g〜1kgの重錐を足関節に巻き、5〜10秒耐えて10〜20回を1日に2回)。

 B膝・腰のひどく悪い人は上向きで寝て、下肢をのばして約30度位拳上して、5〜10秒維持する。これを10回位で1日2回(ただし、反対の膝は必ず曲げておく)。あるいは、膝の下に枕を置き、膝伸展で枕を下に押すようにして下肢を伸ばす運動も有効です。

 さらに、@、Aの方は、バランスを良くするために、側につかまれる物を置いて、片脚立ちを追加されると骨も強くなり、バランス感覚も向上します。そして、3ヶ月後、6ヵ月後に片脚起立時間及びイスから3mの移動時間を比べて、進歩があったかどうかを判定されると良いでしょう。無理をしないでぼちぼちやるのでいいですよ。

 


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