病気一口メモ

『うつ病について』

東彼杵郡医師会    小鳥居 衷

 


ここ十二年間にわたって日本の自殺者は年間三万人を超えています。自殺者におけるうつ病あるいはうつ状態の占める割合はかなりのものであると推測されます。 

 うつ病の原因は多種多様のものたありますが症状としては抗うつ気分、意欲の減退、不眠、食欲不振、体重減少、全体倦怠感、易疲労感、不安、焦燥感、活動性の低下、悲哀感、興味・関心の喪失、思考の進み具合が緩慢となり、考えが頭に浮かばない、夕方は良いが午前中は調子が悪いなどの日内変動、さらには自殺を考えるようになり、実行にうつすことも稀ではありません。

 更に仮面うつ病といって、抗うつ気分や悲哀感はあまり呈さずに頭痛、めまい、ふらつき、嘔気、身体の各所の痛みや不調といったストレスの身体化症状や神経様症状が強いうつ病もあります。また全般的kな精神機能の低下のために、一見認知症のように見えることもあるため、認知症との識別が重要です。周囲にこのような症状の方がおられたら、ためらわず先ず専門医受診を勧めてください。一般的にうつ病は心の風邪と言われていますが、風邪をこじらせて肺炎になってしまっては取り返しの付かないことになる場合があります。何事も早期発見、早期治療が大事です。

 治療方法としましては、専門医の診療、カウンセリングを受けて薬を飲み、状態に応じて十分な休養を取ることです。近年うつ病の薬物治療として中心となっているSSRIやSNRIと呼ばれる新薬は口渇や便秘などの副作用も少なく大変服用しやすい薬です。しかし、症状が軽くなったから、治ったからと言って自己判断で服用を中止したりすることはよくありません。再発、再燃の可能性があるため必ず専門医の指導を受けていただきたいと思います。

 うつ病はよくなる病気です。そのためには周囲の理解と強力で心の傷を深めないことが肝要です。根性がないと無理強いは禁物です。焦らず、ゆくり、確実に直していきましょう。

 


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