病気一口メモ

『子宮頸がんとワクチン・がん診療について』

東彼杵郡医師会    松尾 剛

 


 

現在日本では毎年15000人が新しく子宮頸がんに罹患し、3500人が子宮頸がんで命を落としています。また、20〜30歳代のがんでは死因の第一位が子宮頸がんです。

子宮頸がんとは子宮の入口の子宮頸部というところにできるがんで、この子宮頸癌と子宮頸がんの前駆病変である子宮頸部異形成(CIN)はほとんどがヒトパピローマウイルス(HPV)というウィルス感染が原因です。

 HPVの子宮頸部への感染はほとんどが性交渉によるもので、HPVに感染することは決して特別なことではなく、性交経験がある女性なら誰でも感染する機会をもったことになります。ただし、『HPV感染』=『子宮頸がん』というわけではありません。HPVに感染しても約90%はウィルスが自然消滅します。持続感染した約10%の中の一部が平均10年以上の年月をへて子宮頚部異形成から子宮頸がんに移行します。

 HPVに約100種類のタイプがあり、子宮頸がんの発症に関係するのはそのうち15種類ほどで、発がん性HPVと呼ばれています。最近では10歳代半ばから初性交渉があり、20歳代から30歳代で結婚もしくは性交渉の相手が確立される場合が多いと考えられます。10歳代からの10〜15年の間にHPVの感染が起こり、このうち発がん性HPVの持続感染が5〜10年と経過したところで子宮頚部異形成から子宮頸がんへと進展する例が多いため子宮頸がんは20〜30歳代で急増します。

 海外より遅れて日本でも子宮頸がんの予防ワクチンが承認され接種が開始されています。発がん性HPVの中で日本人に多いとされているタイプに対するワクチンで半年に3回の接種が必要です。HPVに感染する可能性が低い10歳代前半にワクチンを接種することにより子宮頚部異形成、子宮頸がんを効果的に予防できます。また、性交経験のある女性でもその効果は十分に期待できます。

 子宮頸がんワクチンを接種することでHPV感染を予防することはできますが絶対子宮頸がんにならないというわけではありません。子宮頸がんはがん検診によって前癌状態で発見できることが多く、早期発見・早期治療が可能な病気です。子宮頸がんん予防ワクチン接種による発症予防とともに1年に1度は子宮頚がん検診を受信するように心がけてください。

 


ページのTOPへ