病気一口メモ

『転倒』

長崎川棚医療センター   松尾 秀徳

 


 転倒とは、医学的には「自分の意志からではなく、地面またはより低い場所に、膝や手などが接触すること」とされています。階段、台、ベッド、自転車からの転落も転倒に含まれます。

(以後転倒・転落を転倒と略します)

 わが国において転倒は65歳以上の「不慮の事故」による死亡原因の19.2%を占め、また要介護となる原因の11.8%を占めています。また、在宅高齢者の転倒年間発生率は男性19.2%女性20.3%、骨折年間発生率は男性では1.7%、女性は2.3%と報告されています。高齢者における転倒の最大の危険因子は「過去1年間の転倒」であることが多くの研究から明らかとなっています。

また、運動機能・認知機能に問題がある在宅患者さんの転倒については、脳卒中、認知症、歩行・バランス障害を有する人、歩行補助具を使用している人は転倒リスクが高いとされています。

このように「転びやすくなった場合」には、脳梗塞、パーキンソン病、正常圧水頭症、脊柱管狭窄症、さらに認知症などが隠れている場合があります。

最近では、転倒外来・転倒予防外来を開設している医療機関が増え、転倒の裏に潜む病気の早期発見や骨粗鬆症治療による骨折の予防、リハビリテーションなどのプログラムで転倒そのものを減少させようとする取り組みがなされています。長崎川棚医療センターでは転倒外来は開設されていませんが、心当たりのある方(転倒リスク簡易評価法で7点以上の方)は脳外科、神経内科、整形外科、または地域医療支援センターにご相談ください。

また、神経内科では全国の国立病院機構43施設と共同で介護保険を利用されている方々の転倒や転倒に伴うケガの実態を明らかにするための調査を行なっています。この調査へのご協力もお願いいたします。

 


ページのTOPへ