病気一口メモ

慢性頭痛と薬剤誘発性頭痛について

小鳥居内科・脳神経内科クリニック 小鳥居 聡

 


 一言に「頭痛」 といっても、一人ひとりの症状も違えば、感じ方も異なります。頭痛には、くも膜下出血や髄膜炎など命にかかわる脳の病気もありますが、ここでは脳に異常のない、いわゆる「慢性頭痛」に対してお話します。

  慢性頭痛には複数の種類があります。最も多いのは「筋緊張型頭痛」といわれるタイプで、締め付けられる様な重い痛みが頭全体におこり、肩や首の懲りを伴いやすく、筋肉が緊張し痛みが出ます。この頭痛が頭の片側にだけ感じる場合は「片頭痛」と誤解されがちですが、片頭痛はつきに1〜数回の頭痛発作で、目がチカチカする等の前兆の後に(前兆を伴わない場合もありますが)吐き気を伴い、ズキズキする痛みが数時間〜丸一日持続する、若い世代に多い病気です。これは頭部の血管が広がり、炎症を起こして痛みが起こると考えられています。また片頭痛や筋緊張型頭痛が頻繁に起こる方で、毎日鎮痛剤を飲むと、かえって頭痛がとれなくなることがあります。市販の鎮痛剤やエルゴタミン(昔からある片頭痛の治療薬)を毎日のように3ヶ月以上乱用すると、連日のように頭痛をきたすようになります。これは鎮痛剤により、人間の体に備わっている痛みをブロックする仕組みが働かなくなり痛みに敏感になるためおこると考えられます。原因となる鎮痛剤を中止すると1ヶ月以内に頭痛が消失するのが普通です。これらの鎮痛剤乱用による頭痛は、頭部全体の拍動性の頭痛が多く、発作性が不明確なこと、吐き気などの随伴症状を伴わないことで片頭痛と区別が可能です。

  鎮痛剤、エルゴタミンは頭痛の治療のために用いる薬剤で、これらが頭痛の原因になっている点が問題です。使用を中止すれば元来の頭痛には戻るのですが、頭痛がするから使用しているので、薬を飲むから頭痛が悪化しているということを理解していただけないということが多く、こじれて難治性になることがよくあります。片頭痛のある方や慢性的に頭痛が続く方は、自己判断で市販薬を飲み、乱用することは禁物です。最近はよい片頭痛薬も多数でていますので、片頭痛は自分の体質とあきらめず、神経内科(脳神経内科)や脳神経外科の病医院を受診することをお勧めいたします。
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