長崎新聞健康欄
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2005年5月16日掲載

高率の疾患 緑内障


 緑内障とは何らかの原因で目の硬さ、すなわち眼圧が上昇し、目の大切な神経が障害される病気です。恐らくたいていの人は、治ることが難しく、失明してしまう怖い病気といったイメージをお持ちだと思います。この病気にかかっている人は、以前は「四十歳以上の三十人に一人」といわれていましたが、最新の疫学調査によると、「四十歳以上の十七人に一人」ととても高率にみられる疾患であることが分かりました。

 ところが、これほど多い疾患でありながら、治療を受けている人はわずか二割程度で、残り八割の人は未発見のまま放置されているのが現状です。緑内障の初期は自覚症状に乏しく、気付いたときには病状が進行していることが少なくありません。そのため、怖い病気といったイメージが定着したようです。確かに怖い病気ですが、新しい点眼の開発、緑内障手術の発達によって、十分コントロールできる疾患となっています。早期発見がもっとも重要で、四十歳を過ぎたら、血圧や血糖と同じように定期的な検査が望ましいと考えます。

 緑内障はいくつかのタイプに分類できます。最も多い開放隅角緑内障は長い時間をかけてゆっくり進行します。症状も末期になるまで自覚できないことが多く、発見が困難です。また、最近は眼圧が正常なのに緑内障を発症する正常眼圧緑内障が増加しています。正常な眼圧でも視神経が障害されることがあるのです。このタイプは日本人に多いことが分かっていて、最近特に注目されています。

 進行具合をみるためには眼圧だけでなく、眼底検査による視神経の状態の検査、また視神経の感度を調べる視野検査がとても重要な検査になります。これらを総合的に判断して、眼圧のコントロールをしていきます。治療は基本的に点眼で行います。点眼薬は以前と比較して、多数開発されており、多くの症例がコントロールできるようになりました。それらの点眼の組み合わせでもコントロールできない場合は手術の適応となります。最近は大変精密になり、成功率も上がっています。しかし、手術をしても、視野や視力が改善するわけではありません。手術治療は緑内障の長い治療の中での一つの通過点にすぎないという理解が必要です。手術を恐れて、手術時期を逃すことがないような注意も必要です。

 緑内障は高血圧や糖尿病と同じで、根本的に治すことは難しい疾患ですが、コントロールすることはできます。緑内障ともし診断されたら、怖いといったイメージは捨てて、前向きに付き合っていくことが大切です。自己判断での点眼や通院の中止はとても危険です。病気のこと、治療の内容をよく知り、納得がいかなければ主治医にどんどん質問し、場合によってはセカンドオピニオン―主治医以外の医師に意見を求めたりするのも、決して悪いことではないと考えます。積極的な気持ちの方がこの疾患と付き合っていく上で得です。

(長崎市元船町、津田やすお眼科院長 津田恭央)
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