長崎新聞健康欄
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2005年7月18日掲載

水泳と耳・鼻の病気


 夏といえば、水泳の季節。子どもは特に、学校の授業などで欠かせないものです。しかし、耳や鼻に病気を持つ人が水に入ると、症状を悪化させることがあります。プールや海で泳ぐときに気を付けたい耳と鼻の病気について説明します。

 ◇耳あか 耳あかがたくさんあると、水でふやけて耳の穴をふさぎ、聞こえが悪くなることがあります。耳あかを掃除してから泳げば問題ありません。

 ◇急性中耳炎 子どもに多く、耳が痛んだり、熱が出たりします。風邪などで鼻の奥に感染した細菌やウイルスが、耳管という管を通って中耳に侵入すると起こります。プールや海で耳から水が入っても、鼓膜に穴が開いていない限り、急性中耳炎になることはありません。ただし、中耳炎があるときに泳ぐと、痛みなどの症状が悪化することがありますので、完全に治っているかどうか病院で確認することをお勧めします。

 ◇滲出(しんしゅつ)性中耳炎 中耳に液体がたまる病気です。子どもに多く、耳が聞こえにくくなります。プールで泳いでも症状が悪くなることはありませんが、治療のため鼓膜に換気チューブを入れている子どもは注意が必要です。チューブは小さなものなので、入浴で水がチューブの中に入ることはありません。ただ、プールや海で泳ぐときは、念のために耳栓をしてキャップをかぶり、耳に負担のかかる潜水や飛び込みはできるだけ控えるようにしてください。

 ◇慢性中耳炎 鼓膜に穴が開いているので、耳栓が必要です。

 ◇めまい・難聴(圧外傷) 水中に潜ると、鼓膜が水圧で圧迫されます。耳抜きをすることで、耳管を通して中耳内の圧力を調整し、鼓膜への圧迫を軽減していますが、うまく耳抜きができないと耳が痛くなり、中耳炎を起こすことがあります。深く潜って、内耳まで水圧が及ぶと、急激なめまいや耳鳴りが出現し、耳が聞こえなくなることもあります。風邪をひいたり、アレルギー性鼻炎など鼻の病気があると、耳抜きができにくくなりますので、注意が必要です。

 ◇アレルギー性鼻炎 泳いでも構いませんが、プールで使われる消毒薬による刺激で、一時的に鼻づまりや鼻水がひどくなることがあります。水泳後にうがいや鼻の洗浄を行うとよいでしょう。

 ◇副鼻腔(びくう)炎 急性の副鼻腔炎で、鼻の周囲に痛みがあるときや熱があるときは、症状が軽くなるまで水泳は控えてください。

 病気の程度や回復の状況によっては、もう少し厳しい制限が必要なこともありますが、以上のことに注意してしっかりと対策を講じれば、プールに入ることはほとんどの場合、可能です。耳や鼻は、自分では状態が分かりにくい部位ですので、泳いでもいいかどうか判断に迷うときは、かかりつけの耳鼻咽喉(いんこう)科の先生とよくご相談ください。

(長崎市京泊三丁目、なかお耳鼻咽喉科院長 中尾善亮)
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