長崎新聞健康欄
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2005年11月7日掲載

メタボリック・シンドローム


 食欲の秋。食べ過ぎて、少し太ったかなという方はいらっしゃいませんか? そのような方にぜひ知っていてほしい病気があります。それは、肥満が関連した新しい病気「メタボリック・シンドローム」です。

 さて、次の項目のうち、あなたに当てはまるものはいくつありますか。

1,ウエスト(へそまわり)周囲径が男性は八五センチ以上、女性は九〇センチ以上
2,血圧が収縮期一三〇以上かつ/または拡張期八五以上
3,中性脂肪(TG)値が百五十ミリグラム以上かつ/またはHDLコレステロール値が四十ミリグラム未満
4,空腹時血糖値が百十ミリグラム以上

 1,が当てはまり、さらに、2,3,4のうち、二項目以上が当てはまるようならば、あなたはメタボリック・シンドロームといってよいでしょう。

  最近、おなかの中の脂肪(内臓脂肪)は、動脈硬化症と関連があることが分かってきました。メタボリック・シンドロームという診断の目的は、動脈硬化による循環器病=心筋梗塞(こうそく)、狭心症、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症など=をいかに予防するかということです。メタボリック・シンドロームの人は、糖尿病を発症するリスクが通常の七〜九倍。心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクは約三倍にもなるといわれています。

  動脈硬化はある程度症状が進まないかぎり、なかなか症状として出にくい病気です。しかも、動脈硬化による循環器病は働き盛りに突然発症することが多く、生命にかかわる重大な病気であるとともに、後遺症も深刻です。メタボリック・シンドロームを放置しておくと、やがては動脈硬化を引き起こします。動脈硬化にならないために、メタボリック・シンドロームの段階でキチンと改善しておきましょう。

 運動は内臓脂肪を減らすのに一番有効な方法で、毎日のライフスタイルに組み込むことで、案外、簡単に実行できます。エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使う。バス停一つ分歩いてみる―こんなところから始めてみましょう。厚生労働省の「健康日本21」によると、健康維持に最適な運動消費カロリーは一日当たり約三百キロカロリーで、その量を消費するには、一日で一万歩を歩けばいいわけです。

  内臓脂肪がたまりやすい食事は、高脂肪食(脂っこいもの)、高ショ糖食(甘いもの)、高カロリー食(カロリーが高いもの。食べ過ぎ)、低繊維食(緑黄色野菜の不足)です。バランスの良い食事と腹八分目。これがメタボリック・シンドロームにならない秘訣(ひけつ)です。アルコールは、脂肪に変わりやすいので取り過ぎは禁物。おつまみには高カロリーのものが多いので、品を工夫したり、食べ過ぎに注意しましょう。

 また、生活習慣を改善するために、「ウエスト日記」をつけることをお勧めします。ウエスト径や体重の変化を毎日チェックすることで、生活習慣の反省点を見つけ、ウエスト径の減少に成功すれば達成感が得られます。
きょうからおなかの脂肪を減らして、スタイル改善、健康増進へと、運動、食事療法を始めてはいかがでしょうか。

(長崎市滑石3丁目、おくの内科クリニック院長 奥野信一郎)
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