長崎新聞健康欄
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2005年11月21日掲載

変わる「麻疹」「風疹」予防接種制度


 麻疹(はしか)は、極めて伝染性の高いウイルス性疾患で、麻疹ウイルスに対する免疫を持たない人が感染した場合、ほぼ百パーセント発病します。麻疹に対する特異的な治療法は存在しませんので、ワクチン接種によって予防することが大切です。わが国では、麻疹ワクチンの導入後、患者数は著しく減少しましたが、いまだに地域的な流行は繰り返されており、毎年死亡例がでるなど重篤な疾患であることに変わりありません。患者さんの多くは二歳以下の乳幼児で麻疹ワクチン未接種者ですが、最近では成人の間での麻疹(成人麻疹)の増加も目立ってきています。

  海外の多くの国では、麻疹は二回接種法導入によって抑制されつつあり、米国では、患者発生のほとんどは輸入例といわれています。その輸入第一位は日本からであり、「日本は麻疹の輸出国」との不名誉な指摘も受けています。世界保健機関は二〇〇〇年、全世界において麻疹による死亡率を低下させるため、「世界麻疹排除対策戦略計画」を策定し、すべての小児に二回目の接種機会を与えることを勧奨しています。

 このような状況の中、わが国も来年四月から「麻疹・風疹(ふうしん)混合ワクチン」(MRワクチン)を導入した二回接種法に変わることになりました。現在は一歳から七歳六カ月までに、麻疹と風疹の単独ワクチンを各一回接種していますが、新制度ではMRワクチンを一歳から二歳になるまでに一回(一期)、就学前(五―七歳未満の小学校入学前)に一回(二期)の計二回接種となります。これに伴い、来年四月からは麻疹、風疹単独ワクチンは公費負担の対象外(有料)となりますので注意が必要です。

 どのように変わるのか、誕生月別に解説します。

【平成十六年三月までに出生】
来年四月以降は、二歳未満の子どもだけが対象になるため、公費での接種はできなくなります。来年三月までに麻疹、風疹ともに接種を完了しておきましょう。

【平成十六年四月―平成十七年三月に出生】
1,麻疹か風疹のいずれかを接種している場合、MRワクチンを接種することはできません。来年三月までに残りの一つを接種してください。
2,麻疹も風疹もまだ接種していない場合は次の二つのやり方が選択できます。
(a)一歳の誕生日がきたらなるべく早く、麻疹、風疹単独ワクチンを来年三月までに接種する(現行法)。この場合、現状ではMRワクチン二期接種の対象になりません。
(b)来年四月以降、二歳になるまでにMRワクチンを接種し、小学校入学前の一年間に二回目を受けます(新制度)。


【平成十七年四月以降に出生】
新制度にのっとりMRワクチンを二回接種します。
一歳の誕生日がきたら早めに麻疹ワクチンを接種するのが理想ですが、新制度移行期に当たる子ども(前記2,)では、新制度開始の四月まで待つ方がよいのかどうか、混乱が予想されます。かかりつけ医とよく相談して、お子さんにあった予防接種スケジュールを選びましょう。

(長崎市住吉町、よしもと小児クリニック医師 木下英一)
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