長崎新聞健康欄
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2005年12月5日掲載

大腸がん早期発見のためには


 大腸がんは、近年増加傾向にあるがんの一つで、二〇一五年ごろには胃がんを抜くと予想されています。大腸がんの発生については環境因子、特に食事が最も大きな影響を与えているといわれており、動物性脂肪摂取の増加、食物繊維摂取の減少などが罹患(りかん)率の増加の主たる原因になっているようです。
大腸がんの症状には血便、残便感、便が細くなる、便秘・下痢を繰り返すなどの症状があります。これらの症状は進行がんで出現し、早期がんではほとんどが無症状です。大腸がんは比較的治療成績の良いがんですが、進行がんの治癒率は60−70%程度。早期がんはほとんどの症例が手術などの治療で治癒するため、症状が出る前の発見が望まれます。

 では、大腸がんはどのような経過で発生するか―。大腸がんを形態的に大きく二つに分けると、隆起型と平坦型に分類されます。隆起型の多く(約80−90%)は腺腫(せんしゅ)といわれる良性のポリープから発生するといわれています。このタイプはポリープのうちに大腸内視鏡にて切除が可能なものがほとんどです。一方、平坦型は正常粘膜からポリープを経ずにがんが発生するため、発生予防が非常に困難です。
現在、大腸がんの一次検診では便潜血検査が行われており、便潜血が陽性の場合に精密検査を勧めています。進行がんでは約70−80%が陽性で、その検査の有用性が広く認められています。しかし、現在日本人に増加傾向の右側(肛門から遠い)大腸がんで陽性率がやや低いこと、早期がんや良性のポリープで便潜血陰性例が多いことも報告されています。

  早期がんや良性のポリープの発見には、バリウムなどを使った造影検査や大腸内視鏡検査が優れています。特に大腸内視鏡検査は造影検査に比べて精度が高く、平坦型のがんも見つかりやすく、さらにポリープの切除が可能という利点があります。ただこの二つの検査にも欠点があります。まず検査前の下剤の服用が必要で、これは便の残存による見落としを少なくするためです。さらに、便潜血検査よりも体に負担がかかり、特に大腸内視鏡検査では腸に穴が開く穿孔(せんこう)、出血などの偶発症がまれに起こります。これらの理由で、現在は一次検診では行われていません。

  大腸がんの発生機構の解明も少しずつ進んでいます。しかし、大腸がんによる死亡率を低下させるためには、食事などによる発生予防だけでは限界があります。便潜血検査を中心とした検診システムのさらなる充実や、人間ドックなどでの定期的大腸検査による早期がんの発見、前がん病変といわれている腺腫の内視鏡下治療などが重要と考えられます。

 大腸がんが気になる方は、ぜひ、定期的に便潜血検査や大腸検査を受けられることをお勧めします。

(長崎市鳴見台一丁目、鳴見台山中クリニック院長 山中静夫)
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