長崎新聞健康欄
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2005年12月19日掲載

高血圧症について


 高血圧が良くないということは、誰もが漠然と分かっているようですが、具体的に何が問題なのか―。日本人の死亡原因の一位はがん、二位が心臓病、三位が脳卒中ですが、心臓病と脳卒中はいずれも血管に障害の起こる病気で、動脈硬化が原因となっています。この動脈硬化を引き起こす重要な危険因子が高血圧です。では「血圧」とは何か―。心臓は収縮・拡張を繰り返し、ポンプのように血液を全身に送ります。この時に血液が血管(動脈)の壁に与える圧力を血圧といい、心臓が収縮した時の血圧を「収縮期血圧(最高血圧=上の血圧)」、拡張した時の血圧を「拡張期血圧(最低血圧=下の血圧)」といいます。

 血圧は日常生活の中で絶えず変動しています。一般的に昼間に活動している時は高く、夜間の睡眠中は低下します。特に起床直後の血圧は一日の中で最も高くなっています。また、天気や季節の影響を受け、一般的に冬期には血圧は上昇し、夏期には低下します。

 日本高血圧学会の成人における血圧値の分類では、高血圧は収縮期血圧が一四〇以上、拡張期血圧が九〇以上と定義されています。ただし、測定する環境で血圧は異なります。病院で測る場合と、家庭で測る場合とでは数値が違います。病院ではどうしても緊張したりするため血圧値が上がってしまうようです(白衣高血圧)。このため家庭血圧は通常収縮期一三五以上、拡張期八五以上を高血圧としています。家庭血圧測定は、「白衣高血圧」とは逆に、病院での血圧は正常なのに家庭での血圧が高血圧の状態にある「逆白衣高血圧(仮面高血圧)」、起床直後の血圧が非常に高い「早朝高血圧」の診断や、降圧薬効果の評価、判定に有用で、最近の高血圧症の診断、治療において非常に重要になっています。

 高血圧の診断を受けた場合、まず生活習慣の修正(減塩など食生活の改善、肥満の改善、禁煙、適度の運動など)を行い、効果がなければ薬による治療をしますが、すでに心臓、血管系の病気・危険因子を持っている場合や、糖尿病、腎障害、もしくは収縮期血圧一八〇以上、拡張期血圧一一〇以上の重症高血圧の場合は直ちに降圧薬による治療を開始します。降圧目標値(収縮期血圧/拡張期血圧)は若年・中年者では一三〇/八五、糖尿病・腎障害合併例は一三〇/八〇、高齢者では最終的には一四〇/九〇を目標とします。薬物療法は多くの場合、長期間継続して服用することになりますが、薬を飲み続けることが血圧を下げ、心臓・血管病などの合併症の発症を未然に防ぐことになります。これが高血圧治療の大きな目的です。

 高血圧症は決して侮れない病気です。高血圧症の診断を受けたら、どういうものかしっかり理解するとともに、家庭血圧計による自己血圧を十分把握し、主治医とご相談の上、正しい治療を受けてください。

(長崎市片淵一丁目、医療法人黒部医院院長 黒部 勝則)
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