長崎新聞健康欄
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2006年1月16日掲載

介護保険が変わります


 長崎市医師会では長年、医療とともに介護、福祉に力を注ぎ、介護の分野では介護認定審査への協力、医師会保健福祉センターでは介護事業を行っています。

  さて、今年四月、介護保険制度が改定されることに伴い、介護認定方法が変更され、新たな介護サービスが始まります。その改定の概要について簡単に解説します。

  今回の改定は、介護保険制度の基本理念である「自立支援」を主眼としており、できる限り高齢者を介護が必要となる状態にしないことを目的として制度全体の変更を行っています。

  現在の制度では、介護認定で自立と判定された方以外は、要介護状態を要支援、要介護1―5の六段階に判定され、介護度に応じて必要な介護サービスを受けることができます。要介護1以上の方は介護施設への入所も可能です。今回の改定では介護が必要な高齢者をつくらないようにする方法の一つとして、現行の要介護認定で介護の必要性が低いと考えられている方々に対しては、適切な介護予防サービスを提供することで状態の改善または悪化の予防を図ることが考えられています(介護予防)。こういったことから、介護予防の対象者を選定するために介護認定の方法が変わります。

  実際の変更点として、現在「要介護1」と認定されている方が状態に応じて「要支援2」と「要介護1」に分けられ、現在の「要支援」は「要支援1」とされます。要介護2以上の認定と介護サービスの提供に関しては変更はありませんが、要支援1、2の方に対しては状態の改善または維持のために介護予防サービス(新予防給付)が提供されます。これは一定期間後の利用者の目標を定め、それを達成するために必要な介護予防サービスを提供することになっています。

  現在提供されている訪問介護などのサービスも提供の方法が若干変更され、介護予防の新たなサービスとして「運動器の機能向上」「栄養改善」「口腔(こうくう)機能の向上」などが想定されています。それぞれのサービスに関しては提供一定期間後に効果の評価が行われ、効果の認められなかったサービスについては変更または中止することが考えられています。

  特別養護老人ホームなどの介護保険施設については今後、より介護度の高い重度の高齢者を入所させる方向が示されており、グループホームにおいても重度の方への対応が求められています。また、高齢者の方々ができる限り住み慣れた地域で生活できるようなサービス提供をするための方法として、地域密着型サービスという新たなサービスも創設されることになっていますが、詳しい内容についてはいまだに検討中です。

  今回の介護保険制度の改定は、介護保険サービス利用の有無を問わず、すべての高齢者に深く関係するものです。今後の情報を注意深く検討し、不明な点については市役所や役場に相談されることをお勧めします。

(長崎市医師会理事 藤井 卓)
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