長崎新聞健康欄
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2006年2月6日掲載

耳の正しい知識を


 日本耳鼻咽喉(いんこう)科学会は当時の文部省、厚生省、日本医師会などの後援を得て一九五六(昭和三十一)年から三月三日を「耳の日」と制定し、耳の病気に関する知識や健康管理について啓もうを行ってきています。

 耳の構造は大きく分けて空気の振動を集める働きをする「外耳」、外耳から内耳へ振動を伝導する働きを担う「中耳」、中耳からの振動と重力・加速度を関知する「内耳」で構成されており、音を聞くだけではなく身体のバランスを保つ平衡機能もつかさどっています。内耳(蝸牛=かぎゅう)の構造は胎生期にほぼ完成しているといわれています。これは赤ちゃんが成長して言葉を話せるようになるまでにさまざまな情報を耳から得る必要があるからなのです。赤ちゃんが音に反応しなかったり、なかなか発語がみられない場合などは先天性の耳疾患を考えなければなりません。ここ数年、新生児聴覚スクリーニング検査も普及してきました。少しでも早く難聴を発見し、聴能訓練を早期から開始するというものです。私たちにとって「耳が聞こえる」ことは本当に大切なことなのです。

 耳の症状と疾患について簡単に説明します。痛みを伴うもの、難聴を来すもの、めまいを起こすものなどがあります。痛みを伴うものの代表は子どもに多くみられる急性中耳炎です。近年、抗生物質が効きにくい薬剤耐性中耳炎が多くみられ、適切な検査・処置、抗菌剤の使用が重要です。耳の触り過ぎによる外耳炎も成人に多くみられます。難聴を起こすものには、耳あかの充満によるもの、痛みを伴わない滲出(しんしゅつ)性中耳炎によるもの、突然聞こえにくくなる突発性難聴などがあり、耳鳴りや耳閉感、めまいを伴うこともあります。めまいを起こす疾患では回転性めまい、難聴、耳閉感などをしばしば繰り返すメニエール病が有名ですが、めまいを起こす疾患は多岐にわたるため正しい診断を必要とします。

 小さな臓器である「耳」ですが、このようにさまざまな症状を起こすため、耳鼻咽喉科医はそれがどこから起こっているのか診察・検査にて部位診断を行い、適切な治療法を決定します。症状があっていつもと少し違う感じがしたり、数日経っても改善しない場合は早めの受診をお勧めします。

 県耳鼻咽喉科医会と日本耳鼻咽喉科学会長崎県地方部会は毎年「耳の日講演・相談会」を開催しており、今年は二月十九日に佐世保市三浦町のアルカスSASEBOで行います。講演内容は「子供の中耳炎Q&A〜痛い中耳炎・痛くない中耳炎」「睡眠時無呼吸Q&A〜いびきは何故おこるの」「補聴器Q&A〜より良く補聴器を使用するために」です。小さいお子さんをお持ちの方、補聴器を購入したがうまく聞き取れなくて困っている方などに聞いていただきたい内容となっています。補聴器・難聴支援グッズの展示や聴導犬(耳の不自由な方のパートナー犬)の紹介などもあります。耳が不自由な方のために要約筆記・ループシステムを準備していますので是非会場まで足をお運びください。(注 会は終了しています)

(佐世保市早岐二丁目、川尻医院院長 川尻 逸平)
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