長崎新聞健康欄
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2006年3月6日掲載

乳がん早期発見へ


 乳がんの発生率は年々増加しており、現在、女性のがんの第一位になっています。これまでの乳がんの検診では医師がおっぱいを直接触って調べていましたが、この方法ではシコリの大きさが一センチくらいでないと発見できません。これでは女性の乳がんの死亡率を下げることができないので、最近はマンモグラフィ検査が各地で導入されています。

  マンモグラフィとは、おっぱいを縦や横方向にプラスチック板に挟んで撮影する乳房レントゲン撮影のことです。おっぱいを薄く押しつぶせば押しつぶすほど、おっぱいの中に潜む小さな乳がんを映し出すことができます。「大変痛い」との声を耳にされていると思いますが、実際は多くの方が「思っていたより痛くなかった」と言われます。マンモグラフィはうわさより「楽な検査」です。

  乳がんはおっぱいのどこにでもできるものではなく、まず乳管の壁から発生します。がん細胞は増殖する一方で、一部が死んで溶けて吸収され、カルシウムに置き換わることにより、乳管の中に「微小石灰化」と呼ばれる砂粒のような小さなツブツブを残します。これを目印として小さな段階の乳がんを見つけ出すことができるのです。特に乳管の中だけに存在する乳がん(非浸潤性乳がん)は血管やリンパ管に触れないため、転移をしないとされており、この段階で発見できれば乳がんで死亡することがありません。時間がたって腫瘤(しゅりゅう)をつくり、乳管の外に出て増殖する(浸潤性乳がん)ようになると転移能力を持つのです。この段階では石灰化や腫瘤影で発見されますが、マンモグラフィ検査によって少しでも小さいうちに見つけ出せれば、それだけ転移や再発の可能性を低くすることができます。

  しかし、マンモグラフィでも乳がんを発見できない時があります。それは微小石灰化のない乳がんのほか、乳腺に厚みのある若い方では乳腺に隠されて異常所見が出ないこともあるからです。特に三十〜四十歳代の方は注意が必要です。マンモグラフィ検査と併せて、乳腺超音波(エコー)検査も受けることをお勧めします。

  マンモグラフィ検査を受ける時期は、日ごろからおっぱいに痛みのある方は生理が終わり一週間前後。当日、撮影担当者に痛みのあることを伝えましょう。授乳中でも検査は受けられますが、妊娠中や妊娠の可能性のある方は必ず事前に医師に相談してください。

  乳がんのリスクは家族に乳がんの人がいたり、未婚、未出産、未授乳、肥満者で高くなります。このような方は進んで受けるようにしましょう。早期に発見されれば、死亡率が低下し、自分の命を守るばかりか、家族の幸せを守ることになります。

(長崎市浜口町、福田ゆたか外科医院医師 糸 則昭)
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