2006年4月17日掲載
いぼ痔の最新治療
成人の三人に一人が悩んでいるといわれている痔(じ)。その種類は「切れ痔」「痔瘻(じろう)」「いぼ痔」の三つに大きく分けられます。
切れ痔は肛門の出口付近が切れて起こる疾患で、女性に多く、排便時に出血や痛みがあります。痔瘻は肛門の内から細菌が侵入し、肛門の周りが化膿した状態です。肛門の周りが腫れ、激痛が続き、三八〜三九度の発熱を伴う場合があります。うみが出ることもありますが、かえってうみが出ることで症状は楽になります。
いぼ痔は便秘などで息む状態を繰り返すことにより、肛門に負担がかかり、肛門周囲の粘膜の下にある血管の集まりが引き伸ばされて大きくなった状態をいいます。痔の中で最も多いのがこのいぼ痔です。
いぼ痔は痛みを感じない直腸側にできる内痔核(じかく)と、痛みを感じる肛門の皮膚側にできる外痔核に分かれ、外痔核の症状は急に外側が腫れ、多くは強い痛みを伴います。しかし薬で治る場合が多く、早めの治療が大事です。
一方、内痔核の症状は出血や肛門の外への脱出があります。肛門の外へ脱出するようになった場合は、薬では良くなることができず、手術が必要になってきます。従来ではこのような場合、いぼ痔を切る手術が行われてきましたが、肛門の皮膚は非常に敏感で痛みを強く感じるため、実際は、手術は敬遠されがちだったと思われます。
このように従来は手術が必要であった脱出するいぼ痔に対して、昨年、「ジオン注」という新しい薬物注射療法が保険の適応になりました。このジオン注は、薬物投与により、痔に流れ込む血液を減らして痔を硬くし、粘膜に固定させ、いぼ痔を脱出しなくなるようにする治療法です。ほとんどの場合、いぼ痔の脱出は注射をしたその日からなくなるとともに、いぼ痔を切る方法と違って痛みを感じない部分に注射をするため、傷口から出血したり、痛んだりすることはなく、日帰りでの治療も可能になってきました。
ただし、子供や妊婦、腎臓の悪い方などにはこの注射はできず、また、この注射療法が向かない痔もありますので注意が必要です。
さらに、この注射療法は、薬が適当な場所に注射されないと、直腸に炎症が起きるなどの合併症が起きるため、医師の技術が要求されます。現在、専門医でつくる「内痔核治療法研究会」の講習を受けた医師だけがこの薬を使用でき、治療できる医療機関は内痔核研究会のホームページ(http://www.zinjection.net/)で紹介しております。今まで、いぼ痔の脱出で困っていた方にはまさに朗報となることだと思います。
最後に、出血して痔とばかり思っていたら、直腸がんだったということもあります。自己判断せずに、痔かなと思ったら、怖がらないで、早めに専門医に相談することが大事です。 (長崎市江戸町、ながた大腸肛門クリニック院長 長田
康彦)
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