長崎新聞健康欄
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2006年6月5日掲載

咳の原因疾患について


 咳(せき)の原因は、呼吸器の病気の場合と、そうではない場合があります。

〈呼吸器の病気〉
 風邪と呼ばれるウイルスや細菌による急性上気道炎が咳の原因で最も多いのですが、その治療でよくならない時は、マイコプラズマやクラミジア感染が考えられます。これは咳が強いのが特徴で、よく使われる抗生物質が効きません。

 また、咳が三週間以上続く時は、咳ぜんそくという病気が疑われます。就寝時の深夜あるいは早朝に咳が悪化しやすく、風邪や冷気、運動、喫煙、雨天などが増悪因子となり、通常の咳止め薬は効果がありません。ぜんそくの薬は効きますが、治療をしないと30〜40%がぜんそくに移行するといわれています。そのほか、のどのイガイガ感を伴い、たんのない咳を症状とする、アトピー咳嗽(そう)という病気があります。咳の誘因としてはクーラーの冷気、暖気、会話、電話、受動喫煙、運動、香水などです。百日咳は幼児に多いので予防注射をするよう決められていますが、成人での百日咳も最近注目を集めています。

 これら以外にも、肺炎や胸膜炎、肺結核、気胸、肺がん、間質性肺疾患などの病気がありますが、いずれも胸部レントゲン写真で診断がつきます。たばこと関連がある慢性気管支炎は、たばこをやめると咳が改善。咳が強い気管・気管支結核は強い咳が特徴で、たんの検査で結核菌が見つかります。膠原(こうげん)病患者に多い間質性肺炎も咳が主症状。最近問題となっているアスベストによる石綿肺など、粉じんを吸入することによって起こるじん肺も胸部レントゲン写真で分かります。

〈呼吸器以外の病気〉
 心臓、血管の病気では、最近、エコノミー症候群と言われ耳にする、肺塞栓(そくせん)症があります。これは下肢の静脈などでできた血栓が肺の血管を詰まらせる、生命にかかわる危険な病気です。うっ血性心不全も肺に水がたまるので、咳が主症状となることがあります。

 鼻の病気では、咳が長く続くものとして後鼻漏、鼻汁および咳払いなど副鼻腔(びくう)炎の症状を伴った副鼻腔気管支症候群や、後鼻漏症候群があります。また、消化器の病気も咳の原因となり、胃食道逆流症は胃酸が食道に逆流することによって、食道の神経が刺激され咳が出ると考えられています。薬が原因となるのはACE阻害薬という高血圧の薬で、副作用として咳が出ます。高齢者に多いものとして、食べ物を気管に誤えんした場合や、乳幼児に多いものとして、気道内に異物を吸い込んだ場合などがあります。そのほかに心因性・習慣性咳嗽というものがあり、ストレスが原因と考えられています。

 このように咳を来す病気は種々の原因がありますので、風邪と軽くみないで専門医に相談することが大切です。

(長崎市元船町、あおぞら内科クリニック院長 笹山 一夫)
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