長崎新聞健康欄
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2006年6月19日掲載

男性型脱毛症の治療


 男性型脱毛症は、男性ホルモンが関与していることは昔からよく知られています。遺伝も関係しており、いわゆる「若ハゲ」の家系があることも事実です。しかし脱毛の原因はまだ分からないことが多く、根本的な解決策はありません。老化と密接な関係にあるからでしょう。根本的な治療法がない以上、すべての治療は「対症療法」でしかありません。男性型脱毛症を治そうとすると、多くの時間、労力、費用を使い、その割には満足する結果が得られないというのが現状でしょう。

 さて、日本でも昨年、男性型脱毛症の治療薬として初の内服薬が、自由診療扱いで認可されました。これは一日一回、一錠を内服するだけです。処方には医師の処方せんが必要で、皮膚科を受診します。診察は簡単な問診と、当院では頭の記録写真を撮っています。肝機能障害のある方は慎重投与となり、適宜採血を行います。あとは一日一錠内服するだけであり、患者さんの労力と時間はそれ程負担にならないでしょう。副作用もいくつか報告されていますが、5%未満であり、内服を中止すれば消退しますので、それほど心配することはありません。自由診療ですから、費用は医師と患者さんが合意の上で決めるということになります。また、保険も利かないので全額患者負担になります。各医院によって料金は違うはずですので、受診する前に電話で相談されるのもよいでしょう。

 問題は効果で、残念ながら個人差があります。髪はすぐには生えませんので、六カ月間内服し、有効(内服続行)か無効(内服中止)かをご自分で判断することになります。臨床実験では、二十四歳から五十歳の男性型脱毛症患者に四十八週内服にて、50〜60%有効となっています。

 当院での最初の症例は六十八歳男性で、ボランティアで内服してもらいました。内服三カ月にて増毛を認め、六カ月にて著効と考えました。二つ目の症例は私自身。症例一の男性の増毛を確認し、慌てて内服し始めました。現在六カ月目にてやや有効といったところでしょうか。この二例以外はまだ内服六カ月前にて、判定しておりません。しかし、何人かの患者さんは受診されなくなったので、無効と判断されたのでしょう。また、髪のフサフサした若い方が何人か内服していますが、これは将来の脱毛に対する予防といったところでしょうか。

 有効な方も内服を中止すれば元に戻るでしょう。老化と密接な関係がある以上、これは仕方ありません。しかしながら、自毛の増毛を期待する場合、この新薬の内服は簡便で有効性が高く、最初に試みる方法と考えます。自由診療とはいえ、厚生労働省が認可した薬であることは、有効性のデータが信頼に足るものだからです。内服が無効ならば、他の方法も期待できないと私個人は考えており、そのときはカツラもしくは植毛ということになります。もちろん何もしないのが一番賢いのかもしれませんが、関心のある方は一度近くの皮膚科医にご相談ください。

(長崎市上戸町一丁目、どい皮ふ科院長 土居 剛士)
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