長崎新聞健康欄
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2006年11月20日掲載

予防接種広域化について

 長崎県でも、平成十八年十月一日から「予防接種広域化」事業が始まりました。市、町といった自治体の区域を越えて、県内ならどこの医療機関でも予防接種を受けることができる体制を整備しようと各自治体や県医師会、県国民健康保険団体連合会(県国保連)が取り組んでいます。この事業は、各自治体と県内の各医療機関が委託契約を結び、委託料などの支払い手続きを県国保連が仲介するという方法で実施されます。

 予防接種は、各種の感染症に対して免疫を持たない人に、感染予防や発病防止、症状の軽減などを目的として行われます。そのうち、予防接種法第三条第一項に基づく「定期の予防接種」(以下、定期接種)は、市町村長が行うこととされています。

  今回の「広域化」の対象となる定期接種は、「百日ぜきジフテリア破傷風混合(DPT)ワクチン」「ジフテリア破傷風混合(DT)トキソイド」「麻疹(ましん)ワクチン」「風疹(ふうしん)ワクチン」「麻疹風疹混合(MR)ワクチン」「日本脳炎ワクチン」「インフルエンザワクチン(六十五歳以上)」となっています。

  現在、多くの自治体は、医療機関に委託して定期接種をしていますが、もし、かかりつけの医療機関が住所地と同じ行政区域になく、委託契約をしていない場合はどうなるか説明します。

  たとえば、住所地が長崎市でない方が、同市内で定期接種を受けるためには、(1)医療機関に連絡し、事情を説明して接種可能か確認する(2)住所地の自治体の担当窓口に連絡をして長崎市長あての依頼状を送ってもらう(3)療機関で予防接種をし、料金を支払う(4)医療機関が長崎市長あての依頼状と予診票を長崎市に送る(5)長崎市が、住所地の自治体へ予診票と連絡状を送る―という手順を踏む必要があります。(1)と(3)だけでも可能ですが、この場合は「任意接種」となるので、健康被害があっても、定期接種を受けた者を対象とする「予防接種による健康被害の救済」には該当しなくなり、給付が受けられません。

 広域化によって、住所地以外で定期接種を受けるには、委託契約し広域化に参加している医療機関であることを確認する必要はありますが、依頼状や予防接種料金は不要となりました。福岡県や佐賀県でも広域化が始まっていますので、将来、日本国内どこででも定期接種が受けられる、という広域化も予想されます。

  しかし、新しい制度ですので、少し混乱が起こるかもしれません。また、母子健康手帳を忘れて予防接種を受けたり、予診票の記載漏れなどのトラブルが頻発すると、制度自体の見直しも考えられます。便利に、そして正確に「広域化」を育てていくことが、予防接種を受ける方にも要求されます。ご協力をお願いします。

(長崎市川口町、長崎市福祉保健部北保健センター所長 早田 篤)
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