長崎新聞健康欄
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2006年12月18日掲載

検尿で守るあなたの命

 誰でも「検尿」の検査を受けたことがあるかと思いますが、検尿でどんなことが分かるかご存じでしょうか。尿で調べる一般的な項目はタンパク尿と血尿、それに尿糖です。それらは腎炎、尿路系のがん、糖尿病などをスクリーニングするのに用いられていますが、最近はタンパク尿が心臓病や血管の動脈硬化と密接な関係があることが分かってきました。

 どうして、タンパク尿が心臓病や全身の血管の動脈硬化と関係があるのでしょうか? タンパク尿があっても無症状で、タンパク尿が出てもどこも痛くもありません。タンパク尿は腎臓から漏れ出てくるわけですが、腎臓は細い血管の固まりであり、タンパク尿が漏れ出てくるということは血管の異常、すなわち「血管病」であることを意味しています。

 タンパク尿は「全身の血管の異常を表す鏡」と言えます。例えばタンパク尿が陽性だと心臓病(狭心症や心筋梗塞〈こうそく〉)や脳卒中(脳梗塞・脳出血)にかかる危険が少なくとも三、四倍に増えることが報告されています。特に高血圧や糖尿病、喫煙者、高脂肪症(高脂血症)の方は、タンパク尿が陽性になる頻度が高くなります。

 「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」の方はぜひ、タンパク尿が陽性かどうか調べてみてください。「血液がドロドロか」を測定することは難しいことですが、血管の動脈硬化を表すタンパク尿はどこででも検査が可能です。病院、診療所だと検査自体の自己負担は三十円から百円程度です。もし陽性ならば、きっちり治療しましょう。将来、心臓病や脳卒中にかからないための予防につながります。

 タンパク尿は腎炎の主なサインでもあり、陽性の場合には、腎臓専門科での受診をお願いします。腎炎には多くの種類があり、またその程度もさまざまで、しっかりと診断するには「腎生検」という、腎臓の組織を細い針で採取して顕微鏡で調べる検査が必要となります。これは一、二週間程度の入院を要します。無症状でも十年、二十年後に腎不全になってしまう方がまだまだおられ、「もう少し早く受診していただいていれば」と思うことも少なくありません。タンパク尿は「サイレントキラー」であり、無症状でも放置は禁物です。

 また、血尿は腎炎のほか、尿路系のがんのサインとなることもあります。血尿が新たに出てきたときには特に注意が必要です。専門医で診察を受けてください。
腎機能の状態は血液検査でも分かり、その検査項目に「クレアチニン」というものがあります。正常値を少しでも超えると、腎臓の動きとしては、50%以下に低下していることを意味します。

 わずかの異常でも心臓や脳の血管は動脈硬化が進んでいます。いま一度、健康診断の結果を確認し、タンパク尿やクレアチニンに異常の印が付いている方は、腎臓専門医の受診をお勧めします。

(長崎市白鳥町、古川内科医院院長 宮崎 正信)
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