長崎新聞健康欄
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2007年3月5日掲載

「巨大音に注意」

 私たちの周囲にはさまざまな音があふれています。耳に心地よい音や生活に必要な情報を含む音ばかりならよいのですが、時に耳障りな音、不快な音もあります。そのような音を環境騒音といいます。環境騒音が耳に与える影響は、近代工業化社会が成立した十九世紀の終わりごろから知られるようになりました。鉄工所や製缶工場、造船所などで働く人々に起こる難聴が報告されるようになったのです。以来、音の大きさ、種類をはじめ、労働時間や勤務年数と聴力障害との関係が研究されています。

 このような難聴は職業性難聴と呼ばれています。現在は定期健診による早期発見、ヘルメットや耳栓の装着推奨が行われており、立派な予防体制がとられているといってよいでしょう。

 長期間の騒音下作業で起こる障害のほかに、比較的短期間の強大音によって起こる難聴があります。「急性音響外傷」といい、一般の人が注意しなければいけないのはこちらの方です。

 原因となるのは強大な爆発音、ロック音楽、ドラなど打楽器類の音です。具体的に挙げると、精霊流しの爆竹が耳のそばで破裂したときや、ディスコやロックコンサートでスピーカーの近くにいたとき、ペーロンをドラの近くでこいだ後、音を大きくして携帯音楽プレーヤーを聴いた後などに難聴が起こることがあります。

 お祭りや音楽は楽しくて面白く、私たちの生活に潤いを与えるものですが、その中で生じる音が場合によっては耳に悪影響を及ぼすことを知っておきましょう。そして、異常を感じたらすぐに耳鼻科を受診してください。

 ところで、三月三日は「耳の日」でした。これは一九五六(昭和三十一)年に日本耳鼻咽喉(いんこう)科学会が提唱したもので、毎年、三月三日前後に日本各地でさまざまな催しを行っています。「耳の日」ではありますが、耳に限らず耳鼻咽喉科に関係したいろんな病気や健康の話を、一般の方を対象に提供しています。

 県内では、今年は三月十一日午後一時から、長崎市築町の「メルカつきまち」五階ホールで講演会と相談会を行います。今年のテーマは(1)子どもに多い中耳炎−痛いものと痛くないもの(2)音楽は楽しいよ!−親と子のコミュニケーション(3)加齢による難聴と耳鳴り(4)においと味とその病気について−の四題で、それぞれ、講師の方々に分かりやすく話していただきます。

 また、聴導犬の紹介もあります。目の不自由な方に対しての盲導犬と同じように、聴力障害の方の耳の代わりをしてくれるように訓練された犬です。そのほか、補聴器に関しての相談、人工内耳の紹介コーナーもあり、良い耳で健康的な生活を送るための情報や、病気の早期発見・治療の仕方など、正しく有用な知識が得られると思います。多くの方の参加をお待ちしています。

(長崎市新地町、長崎市立市民病院耳鼻咽喉科医師 眞田 文明)
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