長崎新聞健康欄
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2007年3月19日掲載

麻疹・風疹の予防接種

 四月も間近になりました。小学校の入学準備は進んでいらっしゃいますか? また、予防接種はお済みでしょうか?

 予防接種法の改正により、平成十八年六月から、麻疹(ましん=はしか)・風疹(ふうしん)予防接種の追加接種が行われるようになりました。以前は一歳になったら麻疹と風疹の予防接種をそれぞれ一回ずつしていましたが、それでもつい最近まで年間数千人から数万人以上の麻疹の発生があったといわれ、そのうち五十−百人が亡くなっていると推定されていました。この原因は接種率が低いためと考えられていて、実際、麻疹にかかった人の90%以上が予防接種をしていなかったというデータが出ています。

 三年前までは、一歳代の接種率は50%台でしたが、その後の啓発キャンペーンなどでやっと80%を超えるようになり、大流行することはなくなりました。ところが、病気が流行しない環境の下では、長い年月がたつにつれてワクチンによる免疫が減弱したり、また、原因はよく分かりませんが接種をしても最初から免疫がつかない人がいます。麻疹風疹混合ワクチン(一回の接種で麻疹と風疹の両方の免疫が獲得できる新ワクチン)が昨年から使えるようになったことを機会に、このように免疫が不十分な人を救済し、免疫がついた人も効果をさらに確実なものにしよう、ということになったのです。欧米などの先進国ではずいぶん前から麻疹風疹は二回接種をやっており、日本もやっと二回になったということなのです。

 今回の改正で、麻疹風疹混合ワクチンの接種時期は一期目を「満一歳から満二歳未満の間」、二期目を「五歳以上七歳未満で小学校に就学する前(年長児)の一年間(四月一日から三月三十一日まで)」と決められました。この春に小学一年生になる方は三月三十一日までは麻疹風疹混合ワクチンを公費(無料)で接種することができます。これは本年度からの制度ですから、まだ接種されていない方はぜひ忘れずに受けさせておいてください。

 米国では予防接種に関しては厳しくて、麻疹などの予防接種をきちんと受けてない場合は小学校などへの入学が許可されません。日本は「麻疹の輸出国」という不名誉なレッテルを張られており、米国へ転居した際、入学ができずに慌てて予防接種をさせたという話をよく聞きます。日本は国も国民も予防接種の恩恵よりも副反応などに敏感なため、公費、つまり無料でできる予防接種の数も種類も先進国の中では最も少ないという事実をご存じでしょうか。この機会にもう一度、予防接種について考えてみてください。

 なお、水痘=みずぼうそう=や流行性耳下腺炎=おたふくかぜ=は毎年流行しています。これらの病気にかかった場合は学校保健法で五日から七日の出席停止と定められています。学校生活にも影響が出てきますし、周囲にも迷惑を掛けますので、まだこれらの病気にかかってないお子さんは、自費ですが接種をされることをお勧めします。

(西彼時津町、こいで小児科院長 小出 英一郎)
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