長崎新聞健康欄
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2007年4月16日掲載

逆流性食道炎について

 一九九九年十一月、長崎市東長崎地区に外科胃腸科として開業させていただきました。ちょうど、そのころから「逆流性食道炎」が注目され、雑誌に掲載されることが多くなったようです。実際に胃カメラ検査をしてみて、その患者の多さに驚きました。

 逆流性食道炎とは胃の内容物(胃液、胃酸、食べ物)が食道に逆流することで起こるいろんな症状を言います。中でも骨粗しょう症や圧迫骨折を患っている場合に発生しやすく、かつ重症になります。背骨の変形が腹部を変形させ、食道や胃にヘルニアと呼ばれる変形を起こすからです。吐血の原因になったり、食事が飲み込めなくなったりします。

 この病気は飲み薬がよく効きます。「食道がんや胃がんじゃないか」と心配して受診し、逆流性食道炎と診断され薬をもらって安心した人もいました。

 健康食品ブームで「酢」が流行しましたが、最近、酢の飲みすぎで逆流性食道炎を来した人もたくさんいました。

 炎症を起こす主原因は胃酸なので、酢やミカンなど酸性の食品を摂取すると当然、胸焼けがひどくなるわけです。ほかに酸性でなくてもパンやケーキ、カレーなどでも症状がひどくなるようです。冬場の「石焼き芋」もその一例。晩酌も原因になります。胃酸分泌を刺激する食品、胃の中に長く残る性質のものが原因になるようです。

 生活習慣も大きく影響します。前かがみでする仕事や畑仕事を長く続けるのは避けなければいけません。夕食後三時間ぐらいは寝ない方が良いといわれますが「残業が多く、夕食が午後九時、十時だから、すぐ寝ます」という青壮年も多いようです。コルセットや内臓脂肪、便秘なども腹部の内圧が上がり、胃の内容が長く残る原因になるようです。

 症状としては胸焼けが何といっても多いですが、胃部痛、もたれ、げっぷ、背中のこわばりなども見られます。中には心臓病のような胸痛だったり、頑固なせきだったりします。のどの痛みやせきで耳鼻科を受診する人もいるようです。

 治療法は胃酸分泌を抑制する薬がよく効くので、ほとんどの人は問題ありません。しかし、症状を抑えるだけの治療法ですので、中止すれば再発します。根本的な治療法としては内視鏡手術が試みられていますが、まだ一般的とはいえないようです。

 テレビでは最先端の話が紹介されていて驚きます。「逆流性食道炎が原因で食道がんになる場合がある」とか「ピロリ菌に感染していないと胃酸が多くて逆流性食道炎を起こしやすい」とかいった研究もあるようですが、解明し切ってはいないようです。ただ、欧米で多かった逆流性食道炎が日本人にも増えつつあるのは確かなようです。

(長崎市矢上町、矢上藤尾大坪外科胃腸科院長 藤尾 俊之)
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