長崎新聞健康欄
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2007年6月4日掲載

コレステロールと心臓病

 欧米では一九七〇年代から、狭心症や心筋梗塞(こうそく)といった心臓の血管が狭くなったり、詰まったりして亡くなる人が非常に多く、その原因の一つがコレステロールであることが分かりました。当時の日本の心臓病発症率は欧米の七分の一ぐらいで、あまり関心が高くありませんでした。しかし、食生活や生活習慣の欧米化が進むにつれ、重要な病気として取り上げられるようになってきました。

 コレステロールが高いと動脈硬化を来し、心臓病につながる恐れがあります。

 コレステロールは血液中ではタンパク質に包まれ、「リポ蛋白(たんぱく)」として存在します。このリポ蛋白には「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールと、「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールがあります。日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン二〇〇七年版」によると、脂質異常症(高脂血症)の高コレステロール血症の診断基準は、LDLコレステロール値が一四〇ミリグラム以上とされています。

 コレステロール値が高くなる原因のうち、特に注意すべき点が二点あります。

 一つは他の病気が原因で起こる場合です。中年以降の女性は甲状腺機能低下症のため、コレステロール値が高くなることがあります。ネフローゼなど腎臓が悪いときや、糖尿病のときも値が上昇します。これらの病気が見つかれば二次性高コレステロール血症と診断され、原因疾患の治療を優先することになります。

 もう一つは、家族性高コレステロール血症です。遺伝的なもので、若いころから発症し、難治性です。優性遺伝するため、日本では五百人に一人と、とても高い割合で発生します。両親のどちらかがコレステロール値が高かったり、心筋梗塞で亡くなっていたりします。これらは専門家による診察治療が必要です。

 残りの大半は個人の体質に食生活、生活習慣が加わった生活習慣病ということになります。治療の基本は食事療法です。標準体重に落とし、食事で取るコレステロールを一日三〇〇ミリグラム以下に抑えるのです。

 例えば、卵一個の黄身には二五〇ミリグラムのコレステロールが含まれますが、白身にはありません。必ずしも卵を食べ過ぎて高コレステロール血症になるとは限りません。食事療法中の人は黄身を半分にすればいいのです。食事療法は長続きしないと意味がないので量を考えつつ、つつましく、楽しく、上手に献立を作ってください。

 また運動療法も大切です。激しい運動より、週三、四回、散歩や平地での自転車などの軽い運動を三十分以上続けることが効果的です。普段の生活の中でも小まめに動くように意識することも大切です。

 もし食事を変え運動を続けても効果がなかったら、薬物療法になります。最近は効果が高く副作用も少ない薬があり、安心して治療が受けられるようになりました。

 飽食、栄養過剰の時代ですが、まずは自分自身の努力で心臓病発症の予防をしてみましょう。

(長崎市彦見町、ひぐち医院医師 城野 恵理)
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