長崎新聞健康欄
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2007年8月14日掲載

知って役立つ皮膚病の話

 皮膚病と一口にいっても実に数多くの種類があります。その多くは目に見えるので、注意すれば早く病気を見つけられます。一方で、放っておくと問題になるものもあります。皮膚病の正しい知識は皮膚の健康を保つ上でとても大切なのです。

 アトピー性皮膚炎という病名を聞かれたことがあると思います。アトピーとは「奇妙な」という意味です。これは原因がよく分からず、発疹(ほっしん)が出たり、引っ込んだりを繰り返すからです。アトピー性皮膚炎の皮膚はかさかさと乾燥し、ひじやひざの裏側、顔、体に赤くて、かゆい発疹が出ます。「アレルギー」や「皮膚の乾燥」など諸説ありますが、その原因は不明です。残念ながら、完全に治してしまう治療法も今のところありません。

 でも、心配はいりません。塗り薬や飲み薬でうまくコントロールできるからです。「完全に治す」と考えるのではなく、「日常生活を問題なく送れる」ことに治療の目標を置くことが大切です。

 帯状疱疹(ほうしん)は、水ぶくれが帯状に並んで出る痛みを伴った皮膚病で、水ぼうそうのウイルスによる病気です。何十年も前にかかった水ぼうそうは実は完全に治ったわけではなく、ウイルスが体の神経節という場所に潜んでいます。高齢、病気、ストレスなどで神経節から、もう一度皮膚に出てきたものが帯状疱疹です。治すにはウイルスを殺す薬を飲んだり、痛みがひどいときには注射をします。場合によっては入院も必要となります。早めに治療することが大切です。痛みのある発疹が出たら、皮膚科を受診してください。

 ほくろにとてもよく似たがんがあります。メラノーマ(悪性黒色腫)といい、足の裏、爪に多くできます。小さいうちに切り取ってしまえば心配ありませんが、放っておくと転移します。良性の「ほくろ」と見分ける方法は▽大きさが六ミリ以上▽形が丸くなく、いびつ▽色に濃淡がある▽「しみだし」がある▽盛り上がっている−などです。

 また、一見、がんのように見えないがんがあります。がんとは気が付かず、放っておくと問題となります。例えば、パジェット病と呼ばれる皮膚がんは陰部にできて、湿疹(しっしん)や「いんきんたむし」と思い込んでいることがあります。湿疹のように見えて、実は菌状息肉症と呼ばれるリンパ球の腫瘍(しゅよう、悪性リンパ腫)ということもあります。心配な時は皮膚科医に相談してください。

 県内の皮膚科専門医でつくる長崎臨床皮膚科医会は「ひふの日」のイベントとして、十月六日午後三時から長崎市栄町の市医師会館で「知って役立つ皮膚病の話」をテーマに講演会、相談会など開く予定です。みなさんの大切な健康を守るためにもぜひご参加ください。

(長崎大医学部皮膚科教授 佐藤 伸一)
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