長崎新聞健康欄
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2007年11月5日掲載

脳卒中のリハビリ

 脳卒中(脳血管疾患)は日本人の死亡原因の第三位であり、介護が必要になる原因の第一位です。脳卒中が国民の健康や介護に与える影響は極めて大きいといえます。

 突然発症することが多く、重症であれば生死にかかわります。障害が起きた血管で症状が異なるため、運動まひ、感覚障害、言語障害など多くの症状が認められます。しかし、現在では脳卒中専門病棟で集中的な治療と早期のリハビリテーションを行うことで、死亡率が低下、日常生活活動が改善されることが明らかとなっています。

 脳卒中のリハビリの流れを時期で分類すると急性期、回復期、維持期に分かれます。

 急性期のリハビリは発症直後から開始され、生命の危機を脱して全身状態が安定するまで行われます。過度の安静を続けると脳卒中が治療できても、手足の関節拘縮(こうしゅく)や筋力低下などで寝たきり状態になる危険があるためです。集中治療室のベッドサイドで救命治療を行いながらのリハビリとなり、その内容は関節拘縮や筋力低下の防止、早期座位や立位の獲得、嚥下(えんげ)、摂食、排尿・排便の確立などに及びます。

 回復期のリハビリは、全身状態が安定した二、三週間後から六カ月ごろまで、リハビリ専門病院に転院、もしくは回復期病棟に移って行われます。急性期を過ぎて後遺症が残った場合に、それぞれの障害に対して集中的なリハビリを行います。後遺症が残存した人には最も回復が期待できる時期でもあります。運動まひを呈した人では、装具の作製なども行われます。

 維持期のリハビリは後遺症がある程度まで回復した段階で、在宅療養か施設に入所して行われます。在宅療養、施設入所のいずれも主に介護保険を利用し、継続したリハビリが行われます。

 入所する施設は介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、特定施設などがあり、病状や介護状態で選択されます。

 在宅療養の人には、診療所や訪間看護ステーションから理学療法士らの派遣を受けて自宅でリハビリができる訪問リハビリというサービスがあります。日常生活が困難な人に対しては、診療所や施設などでの通所リハビリ(デイケア)があります。患者本人の機能訓練だけでなく、日常生活の援助や家族の介護負担軽減なども含めた支援となっています。

 維持期のリハビリはその後の生涯にわたります。後遺症の機能回復の時期は過ぎていますが、リハビリを中断してしまうと再び関節拘縮や筋力低下などが生じて日常生活の維持が困難になってしまいます。寝たきり予防の上でもリハビリが重要になります。リハビリを継続することは、自分らしい人生を送るために欠かせないライフワークともいえるでしょう。

 在宅療養している人でリハビリを希望する人はかかりつけ医、または居宅介護支援事業所で尋ねてください。

(長崎市中町、おおつる内科医院院長 大津 留泉)
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