長崎新聞健康欄
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2007年11月19日掲載

小児ぜんそく

 ぜんそくは急にせき込みだし、ヒューヒュー、ゼーゼーと呼吸が苦しくなる病気です。小児ぜんそくの治療では三つのことが大切です。

 一つ目は環境の整備です。たばこの煙はぜんそくを悪化させます。ぜんそくの子どもがいる家庭は禁煙です。ダニが原因なら、掃除を小まめにしてほこりを少なくし、ダニが付きやすい縫いぐるみやじゅうたんは避けましょう。猫などのペット類も良くない場合があります。

 二つ目は運動です。ぜんそく児は運動で発作を起こすことがあります。しかし、運動を避けていては肺は強くなりません。準備運動をよくしておくと、発作は起きにくくなります。運動前に薬剤を服用することも有効です。

 三つ目が薬物による治療です。薬物療法は発作が起こったときの治療と、発作が起こっていないときの予防的治療に分けられます。

 この中で予防的治療が最近大きく変わり、かなり発作を抑えることができるようになりました。予防的治療をきちんとしていれば、小児ぜんそくはそれほど怖い病気ではなくなりました。

 ぜんそく児は発作がないときは元気で、普通の子どもと同じように見えます。しかし、肺ではアレルギー性炎症と呼ばれる反応が起こっていて、気管支の粘膜は腫れ、分泌物がたまっています。わずかな刺激で、発作が起きる状態になっているのです。

 このアレルギー性炎症を放置しておくと、気管支の粘膜や筋肉が厚くなり、慢性的な呼吸障害を引き起こします。そして、大人になってもぜんそくが治らない可能性が高くなります。ですから、このアレルギー性炎症を抑えることが重要です。つまり、発作が起こっていないときも治療が必要なのです。

 炎症に対して、よく使われる薬剤は二種類あります。

 一つは「抗ロイコトリエン」という薬です。この薬は長期服用しても、ほとんど副作用がありません。
 もう一つは、吸入ステロイドです。

 ステロイドとはホルモンの一種で、炎症を抑える力が大変強い薬剤です。これを長期間服用すると、さまざまな副作用が現れます。しかし、薬を吸って気管支に直接到達させる吸入薬であれば、小児でも副作用はほとんどありません。最近は自分の力で吸うことのできない乳幼児のために、機械で吸入させるタイプもあります。

 炎症を抑える薬剤が使われるようになってから、ぜんそくが重篤化し、入院に至るケースは格段に減少しました。

 繰り返しますが、小児ぜんそくは発作を止める治療だけでなく、発作が起こっていないときの治療も必要です。ぜんそくを持っている人は主治医とよく話し合い、根気よく予防的な治療を続け、根治を目指してください。

(長崎市江川町、片山小児科院長 片山 和弘)
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