長崎新聞健康欄
前の記事へ 記事一覧へ 次の記事へ

2007年12月3日掲載

経鼻内視鏡検査

 胃がんは、医学の進歩ならびに西洋型の食習慣、若年層のピロリ菌保有率の低下により、その死亡率は減少の傾向にあるといわれています。それでも依然としてその死亡率は悪性新生物の中では肺がんに次ぐ二位の位置を占めています。

 そのため胃の内視鏡検査は早期発見・早期治療のための重要な位置を占めています。一般の人には非常に苦しい検査という印象がありますが、近年の胃カメラの進歩は目覚ましく、検査精度の向上とともに患者さんが楽に検査ができるようにとの努力も積み重ねられてきました。

 現在ではカメラの太さは約六ミリと、以前の三分の二ほどに細くなりました。それにより鼻から胃カメラを入れることが可能になりました。今日はその「経鼻内視鏡」についてお話ししたいと思います。

 従来の胃カメラは口から約九ミリの内視鏡を挿入します。舌の付け根の部分には吐き気を誘発する部位があります。検査のときは、のどに麻酔をすることで吐き気やのどの痛みなど不快感を抑えるようにします。しかし、吐き気の発作を完全に抑えることは難しく、そのため「胃カメラは苦しい」といわれてきました。

 鼻から胃カメラを挿入できるのは鼻の奥とのどがつながっているからです。「鼻からの胃カメラ」は鼻から入り、吐き気を催す舌の付け根を避けてのどに抜け胃に到達します。そのため口からの胃カメラと比べると吐き気が少なく楽にできるわけです。

 鼻からの胃カメラが優れている点と劣っている点を挙げてみましょう。

 優れているのは、吐き気が少なく比較的楽に検査を受けることができるほか、口を通らないので検査中も会話をすることができることです。

 検査自体の刺激が少ないので検査に必要な薬が少なくすみ、心臓の悪い患者さんなどでも比較的安全に検査ができます。

 さらにのどの麻酔が軽くてすみ、口からの胃カメラより早く飲食ができるようになります。一般的には検査後四十分ほどかかりますが、それでも口からの胃カメラの三分の一です。前処置の仕方によっては検査直後から飲んだり食べたりすることも可能です。

 一方劣る点としては、▽麻酔や検査自体の時間も比較的長めになる▽鼻を通るため、鼻が出血しやすい人や狭い人は適さない▽カメラが細いため、胃カメラによる手術、例えば早期胃がんやポリープの切除には向かない−などがあります。ただ、以上のような点を考慮しても、胃がんの早期発見のためには十分な性能と安全性を持っています。

 苦しそうなので胃カメラは避けていたとか、以前胃カメラできつい目にあったという方は、一度試してみてはいかがでしょうか。

(長崎市松山町、胃腸科もりクリニック院長 森 宣陽)
>>健康コラムに戻る

前の記事へ 記事一覧へ 次の記事へ