長崎新聞健康欄
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2008年2月4日掲載

膣炎・外陰部のかゆみ

 恥ずかしそうに女性の患者さんが診察室に入って来られます。「外陰部がかゆいんです」。場所が場所だけに、誰にも相談できず、時には数年にわたって悩んでいる方も数多くいらっしゃいます。

 外陰部のかゆみや腟(ちつ)炎は成人女性に起こりやすいトラブルですが、時に小児やお年寄りにも生じます。

 通常、腟の中には、デーデルライン桿(かん)菌という常在菌がいます。この菌によって作り出される乳酸が有害な微生物の増殖を抑え、腟内を守っているのです。

 しかし、妊娠、ホルモンバランスの乱れ、体調不良、抗生物質や風邪薬、経口避妊薬の使用、糖尿病、ダイエット、ストレスなどのさまざまな原因で、デーデルライン桿菌の働きが低下すると、腟炎が起きます。おりものが増えて悪臭がしたり、外陰部が赤く腫れたり、かゆくなったり、痛みを伴ったりします。

 腟炎の中で最も一般的なものが、カンジダという真菌(カビ)の一種が増殖するカンジダ性腟炎です。豆腐カスのようなポロポロとしたおりものが特徴的です。

 委縮性腟炎は、閉経後や卵巣を摘出した女性に生じます。卵巣から分泌される女性ホルモンが少なくなるため、腟粘膜が薄くなって分泌物が減り、腟の自浄作用が低下して発症します。黄色いおりものが認められ、時には血が混じることがあります。下腹部の何とも言えない違和感や、ぼうこう炎の時のような排尿時の違和感も伴います。

 トリコモナス腟炎は原虫が原因です。においを伴い、泡立ったサラサラの黄色いおりものが増えます。セックスが主な原因ですので、パートナーとの同時治療が有効です。

 その他、雑菌による腟炎(非特異性腟炎)や、ナプキン、化学繊維などの物理的な刺激による外陰部のかぶれなどでも、おりものが増えたり、かゆみが出たりします。

 腟炎の予防には外陰部を清潔に保つことが大事で、排便後は腟から肛門(こうもん)へ向かってふくようにしましょう。ただ、せっけんで外陰部を洗いすぎたり、腟の洗浄を必要以上にすることは厳禁です。

 化学繊維のショーツやきつすぎるズボンの着用、ナプキンやおりものシートなどの頻繁の使用も外陰部が蒸れて、腟炎が生じる一因となります。セックスで感染する腟炎にはコンドームが有効です。

 「規則正しい生活、バランスのとれた食事、適度な運動」はどの疾患予防にも通じることですが、感染に対する免疫力を高めることになりますので、腟炎に対しても基本的な予防法と言えるでしょう。

 いずれの腟炎、かゆみにしても、婦人科を受診し、その原因を突き止めて適切な治療をすれば早期に治ります。受診は恥ずかしいからと自己流で対処すると、ますます病状を悪化させることになりかねません。かきむしるとさらに症状はひどくなり、悪循環に陥ります。ぜひ、勇気を出して、近くの婦人科を受診してください。すぐに症状も軽くなって気持ちも楽になりますよ。

(長崎市橋口町、産婦人科宮村病院医師 浜口 直美)
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