2008年1月21日掲載
特定健診・特定保健指導
生活習慣病の危険性が高まるメタボリック症候群(内臓脂肪症候群)に着目した特定健康診査(特定健診)・特定保健指導が二〇〇八年度から導入されることになりました。残り数カ月。待ったなしの状況です。
これまで国民の健康を守るため、市町村が四十歳以上を対象にした健診事業「基本健康診査」を実施してきました。さらに近年は、国民健康づくり運動「健康日本21」(二〇〇〇年)、健康増進法(〇三年)などに基づき各種健診事業が展開されてきました。
しかし、その成果は十分といえませんでした。
生活習慣病予防検診の結果を見ると、年々「異常なし」の割合が減少しており、〇六年度は5・4%に低下しました。メタボリック症候群リスク(肥満、高血圧、高血糖、高脂血症)については、男性は肥満30%、リスク二項目以上42%に上っています。女性は肥満18%、リスク二項目以上22%でした。
二次検査の受診状況に関する調査では、血圧や高脂血症などは軽視されて受けていない人が多い一方、健診後の指導を受けたい人が75%いるという結果でした。
さらに医療費との関係では、〇三年度の患者一人当たりの年間医療費が「異常なし」群では十四万円なのに対し、リスク二項目以上では二十万円、四項目以上では四十五万円と膨らんでいました。
こうした状況に加え、医療費適正化、つまり医療費の抑制を図る狙いから特定健診の実施が決まったのです。
特定健診の特徴の一つは、基本健康診査と同じような検査を行いますが、その結果を受けて「指導」に重点を置くことです。さらに実施主体が医療保険者となり(がん検診などは引き続き市町村が行う)、設定された受診率や数値目標を達成できなかったときにはペナルティーを科す試み(七十五歳以上を対象に新設する後期高齢者医療制度に対し、保険者が納付する支援金の加算など)も導入されます。
健診制度としては、これまでにない大変革になります。この一年間、保険者、市町村の担当者だけでなく、全国の医師会もその対応策に苦慮してきました。ですが、今も解決されていない問題があります。
健診の費用や受診者の一部負担の有無や額、指導にかかる診療報酬額など金銭にかかわるものから、▽保険者間で生じる検査内容や金額の格差▽医療機関から保険者への健診データの報告方法▽指導を行う機関の整備と選定方法▽受診率向上の具体的策−など数え上げれば切りがありません。
関係機関の協力や討議が不可欠で、その成否が四月から実際に特定健診が開始できるかの鍵を握ります。市民の方も理解を深めていただき、ぜひ健診に足を向けていただければと思います。
(長崎市医師会地域医療担当理事 上小島4丁目、小森内科クリニック院長 小森 清和)
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