長崎新聞健康欄
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2008年3月3日掲載

便通異常

 おいしく食事ができ、十分睡眠がとれ、食べたものを気持ちよく排せつできることは重要なことです。毎日便通がある必要はなく、気持ちよく十分量の排便があればいいのです。排便は毎日行かなければならないとの強迫観念にとらわれることはありません。

 便はどんなものが良いかというと、バナナ状の適度な柔らかさのものです。下痢便、泥状便、ぽろぽろしたウサギのふんのような便はよくありません。

 便秘とは三日以上便が出ない状態とされています。便秘の種類は、特発性便秘と続発性便秘に大きく分けられます。

 特発性便秘が一般にいわれる便秘症で、さらに細かく分けると単純性便秘、けいれん性便秘、弛緩(しかん)性便秘があります。

 単純性便秘は旅行時のように生活環境やストレス過多などで生じる便秘で、そうした原因がなくなると軽快します。

 けいれん性便秘は、腸管が緊張しすぎて細く狭くなり、ウサギのふん状の便となります。時に不快感、腹満感、腹痛があり、便秘と下痢を交互に繰り返すこともあります。

 弛緩性便秘は大腸の運動と緊張の低下により、大腸全体が緩んで拡張して起こります。便意を我慢して排便反射が抑えられたり、下剤を長期服用したりした場合のほか、運動不足、水分・食物繊維の摂取不足、高齢者、寝たきりの人に多く見られます。

 続発性便秘は病気により生じる便秘です。がんなどにより通過障害を来したり、糖尿病や薬物などで腸管の動きが悪くなって生じます。原因の治療・改善を図ることで症状は良くなります。

 最も発生頻度の高い弛緩性便秘の対策は次のようなものです。

 まず、食物繊維の多い食べ物を食べることです。大腸の内圧を高めて大腸壁を伸展させることが不可欠。野菜や果実の繊維は水分を含む性質があり、便が膨れることで腸の働きを良くします。食物繊維は一日に二十−二十五グラムは取るようにしましょう。最近、日本人は十グラムぐらいしか食べていません。

 次に十分な水分を取ることです。できれば一日に一・五−二リットル。水分とともに香辛料で、腸を刺激しましょう。便が柔らかくなり排便しやすくなります。ただ、腎臓、心臓疾患の人は注意が必要です。

 そして、朝食でしっかり食物繊維の多いものを食べ、多量の水分を取ることが大切です。胃結腸反射は朝起こりやすく、排便しやすくなります。

 また、脂肪を一日十−十五グラム摂取するようにしましょう。脂肪は腸内を滑らかにし、脂肪酸が腸を刺激し排便をスムーズにします。

 スポーツ、運動に親しみ、ストレスをためないように心掛けましょう。何より便意を催したら我慢しないこと。反射が起こりやすく排便しやすくなります。

 これらのことを試しても排便のないときは下剤を服用します。便秘を放っておくと、大腸が拡張して壊死(えし)する宿便性壊死性大腸炎を起こすことがあります。高齢者の便秘は特に注意が必要です。人にとって、排せつはとても大事なことです。

(長崎市片淵一丁目、長崎県済生会病院外科医長 野川 辰彦)
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