長崎新聞健康欄
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2008年4月21日掲載

下肢静脈瘤の最新治療

 足の表面の静脈がこぶ状や網目、クモの巣状に浮き出たものを「下肢静脈瘤(りゅう)」といいます。見た目だけの問題と思われて放置されることが多い疾患でしたが、足が重い、だるい、疲れやすい、夜になると足がつりやすいなど不快な症状を引き起こします。

 足の静脈は血液を心臓に戻すため、逆流しないための弁がついています。ところが、妊娠出産や立ち仕事、遺伝的要因などで静脈の弁が緩んだり壊れたりすることで、血液が逆流して足にたまり、静脈が目立つようになるのです。
 足のだるさなどは静脈のうっ血のためで、ほかに皮膚が茶色っぽく変色して硬くなったり、潰瘍(かいよう)ができたりします。

 さまざまな治療法がありますが、適切な組み合わせで効果が倍増します。手術を伴わない保存的治療には、まず「圧迫療法」があります。弾性ストッキングをはき、強く締め付けることで、表面の静脈の逆流を減らすことができます。

 次に軽いのは「硬化療法」です。静脈に注射針で薬を注入し、圧迫して閉塞(へいそく)させます。外来でも可能な治療法です。ただ、細い静脈瘤には向きますが、太い静脈瘤や逆流のある静脈本管に行うと再発することもあります。

 根本治療としては、やはり手術になります。以前は全身麻酔や下半身麻酔をし、一週間前後の入院が必要でしたが、現在は日帰り手術も可能となっています。

 「ストリッピング手術」は、足を少なくとも一、二カ所切開し、静脈の中にワイヤを通して逆流する静脈本管を抜き取る方法です。局所麻酔と静脈麻酔の併用で、日帰りが可能です。

 さらに進んだ治療法にレーザー治療があります。逆流する静脈に針を刺して静脈の中に非常に細いレーザーファイバーを入れるか、五ミリほどの切開で静脈に直接ファイバーを入れるかして、静脈内側からレーザーを照射し血管を閉塞させる方法です。痛みも少なく、体に優しい治療法です。

 欧米ではレーザー治療が主流ですが、日本では保険診療で認められていないため、あまり普及していません。また、レーザー治療にも適応があり、静脈が太すぎる場合や皮膚に近すぎる場合はお薦めできません。目立つ部分の静脈瘤は二ミリ程度の切開で摘出することも可能です。

 静脈瘤の治療は日々進歩しています。手術日も病院滞在時間は二、三時間で済み、仕事の合間に受ける人もいます。手術当日から全く足がつることがなくなり、喜ぶ人がたくさんいます。診断の際も造影検査は必須ではなく、エコー(超音波検査)だけでも可能です。

 お悩みの人は最寄りの血管外科を受診してみてはいかがでしょうか。当院では、毎月第四土曜日に「足の健康セミナー」も開いています。

(長崎市恵美須町、ながさきハートクリニック心臓血管外科 部長  多田 誠一)
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