長崎新聞健康欄
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2008年7月7日掲載

過活動膀胱について

 OAB(過活動膀胱=ぼうこう)は、二〇〇二年の国際禁制学会で定義された新しい病気の概念です。主な症状としては▽急に我慢できないような尿意が起こる「尿意切迫感」▽日中の排尿が八回以上と多い「頻尿」▽夜寝ている間に尿意で目が覚め、一回以上トイレに行く「夜間頻尿」−が挙げられます。急にトイレに行きたくなり、我慢できず尿を漏らしてしまう「切迫性尿失禁」も多いようです。

 日本排尿機能学会が四十歳以上の男女四千五百人を対象に行った調査では、12・4%にOABの症状が認められました。全国の推定患者数は約八百十万人、八十歳以上では三人に一人に達するといわれています。

 OABでは、膀胱の排尿筋が自分の意思とは無関係に急に収縮してしまいます。原因としては脳や脊髄(せきずい)の中枢神経の疾患に起因する神経因性の場合と、そうでない非神経因性があります。八割以上は非神経因性ですが、そのほとんどは原因が特定できていません。

 ただ、女性は出産や女性ホルモンの減少により膀胱や尿道を支える骨盤底筋が緩むことが、男性は前立腺肥大症が影響しているのではないかと考えられています。

 診断の際は質問票を用いて重症度を判断し、さらに排尿日誌をつけて排尿時刻や排尿量、尿意切迫感や切迫性尿失禁の有無などを記録してもらいます。日誌をつけることでトラブルの特徴や傾向を把握でき、より適切な治療ができます。尿検査や血液検査、腹部エコー(超音波検査)などを行い、尿路の炎症性疾患や結石、腫瘍(しゅよう)などを除外します。

 治療は薬物療法が主体になります。主に使用されるのが抗コリン剤です。排尿筋の不随収縮を引き起こす神経伝達物質の働きを遮断する薬です。抗コリン剤の副作用には口の渇きや便秘などがありますが、最近は副作用の少ない薬が開発されています。

 その他の治療法としては膀胱訓練や骨盤底筋体操などの行動療法があります。機能が弱まった膀胱や骨盤底筋を鍛えることで症状の軽減が可能ですし、薬物療法と併用するとより効果的です。それらの方法は泌尿器科専門医院にパンフレットなどがありますので参照してください。

 日常生活で気をつけておくことは適度な運動を行い、身体、特に下半身を冷やさないように注意することです。便秘や肥満があれば改善するようにします。アルコール類やお茶、コーヒーなどカフェイン類、刺激の強い飲食物は控えましょう。水分の取り過ぎにも注意が必要ですが、血管の病気がある人は主治医と相談して水分量を決めてください。

 最後にOABは直接生命にかかわる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を著しく損ないます。「病院に行くのが恥ずかしい」「年のせいだから仕方がない」などとあきらめないで、思い切って近くの泌尿器科を受診してください。適切な治療を行うとかなりの確率で症状は改善できるのですから。
 (長崎市住吉町、森光泌尿器科クリニック院長)

(長崎市住吉町、森光泌尿器科 院長  森光 浩)
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