長崎新聞健康欄
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2008年7月21日掲載

耳鼻咽喉科の手術療法


 耳鼻咽喉(いんこう)科の手術といえば昔から「怖い」「痛い」というイメージの人が多いかと思います。以前と比べて手術が必要な症例が減ってきた病気もありますが、手術をしないと治らないものもやはりあります。医療技術や機器の進歩により手術方法もかなり変わってきました。耳鼻科でよく行う手術について説明します。

 中耳炎が長引いたり、中耳が傷んで聞こえが低下したりしないようにするための手術に「鼓膜切開術」や「鼓膜チューブ留置術」があります。

 特に小児に多い急性中耳炎で行うのが鼓膜切開術です。診療ガイドラインに沿って鼓膜の状態や耳痛、発熱、不機嫌などの重症度分類を行い、軽度ならば内服治療としますが、中等度以上では積極的に鼓膜切開して、うみを出します。中耳炎の主な原因は鼻咽頭(いんとう)炎ですので、手術だけでなく、鼻、のどの治療も必要になります。

 急性中耳炎が反復する場合や鼓膜内に水がたまる滲出(しんしゅつ)性中耳炎が三カ月間以上続く時に行うのが鼓膜チューブ留置術です。鼓膜を切開してもしばらくするとふさがるため、切開した穴に小さなチューブを差し込み耳の中の通気を保つようにします。

 顕微鏡を用いた手術で外来でも可能ですが、暴れたり、術後の精神的トラウマが予想されたりする場合は全身麻酔による日帰りか短期入院の手術となります。大半は手術直後から聞こえがよくなります。チューブの留置期間は数週間から約二年間ですが、症状が落ち着いていれば月一回程度の経過観察で済みます。

 アレルギー性鼻炎が外来治療で改善しない時には「下鼻甲介手術」を行います。鼻粘膜表層を焼灼(しょうしゃく)、いわゆるやけどの状態にしてアレルギー反応を軽くします。特に鼻づまりに対しては約80%の人が改善します。レーザーや電気凝固器、化学薬品、超音波振動メスなどを使います。学童でも局所麻酔のガーゼを鼻に入れて、手術をさせてもらえれば外来でも可能です。

 「鼻茸(はなたけ)切除術」は、鼻の粘膜が腫れてできる軟らかい鼻ポリープを切除する手術です。ポリープが鼻の中に充満して鼻づまりが強い場合、頭痛や睡眠障害を来したり、気管支ぜんそくがある人は発作が悪化、長期化したりすることがあるので、手術がお勧めです。ほとんど痛みはありませんし、最近は切除するための「シェーバー」という電気ドリルバーなどの器具も開発され、より短時間で外来手術が可能となりました。

 「へんとう摘出術」は文字通り、のどの奥にあるへんとう腺を取り除く手術です。急性へんとう炎を年に三、四回繰り返す場合や、腎炎、リウマチ熱、頑固な皮膚病、原因不明の熱などの病気で、その原因がへんとう腺の可能性がある場合に適応されます。全身麻酔下で行い、術後一週間くらいの入院が必要です。

 誰でも手術は避けたいものですが、手術で劇的に治ることも多いのです。お悩みの方は専門の医師と相談されることをお勧めします。(西彼時津町浦郷、ひらのクリニック院長)

(西彼時津町浦郷、ひらのクリニック 院長  平野 康文)
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