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長崎市医師会報2006年3月号 pp.1-4.

高齢者介護予防の流れ

担当理事  藤井 卓 

  平成18年度からの介護保険の改定等に伴い高齢者に対する介護・福祉の施策が変わります。そこで、現在までに判明している今後の高齢者(65歳以上)介護予防の流れの概要と医療との関わりについて解説します。

1.高齢者介護予防の全体像(図1)

図1 高齢者介護予防の全体像

高齢者(65歳以上)の全ての方を

 1.介護を要するか否か
 2.介護予防事業の対象となるか否か

の2つの観点から大きく4つのグループに分けます。
先ず、介護の必要性の有無については要介護認定申請を行った方に対し、市町村に於いて要介護状態の認定審査を行います。現在は非該当以外を要支援、要介護1〜5までの6段階で認定し、要介護状態に応じて介護サービスが受けられます。平成18年度からは、新たに判定方法が変更され、現在の介護1の中で介護予防事業の対象となる人を要支援2と判定します。(図2)
介護の必要性が無い(要介護認定での非該当を含む)と考えられる方に対しては、基本チェックリスト(表1)を用いたスクリーニングを行い、生活機能低下のある特定高齢者とそれ以外の一般高齢者とに分類します。

図2 新予防給付の対象者の選定

表1 基本チェックリスト(案)

2.状態別の介護及び介護予防サービス

 1.要介護者(要介護1〜5)
 要介護1〜5の方に対しては現在と同様の介護サービスを受ける事が出来ます。新たに地域密着型サービス(表2)が新設される事に伴い新たなサービスも受ける事ができるようになります。

表2 地域密着型サービス、地域密着型介護予防サービス

 2,要支援者(要支援1、2)
 要支援者に対しては、地域包括支援センターのケアマネジャーによる介護予防プラン(委託も可)に従い、新予防給付サービスが提供されます。(地域包括支援センター、新予防給付に関しては後述)

 3.特定高齢者(介護、支援の必要は無いが生活機能低下のある者)
 特定高齢者に対しては地域支援事業として、介護予防事業が行われます。事業の内容は集団的なプログラムを用い

 1)通所型介護予防事業(運動器の機能向上、栄養改善、口腔器の機能向上)
 2)訪問型介護予防事業(閉じこもり予防・支援、認知症予防・支援、うつ予防・支援)

が行われ、この事業に関しては民間事業者に委託される事になっています。(図3)

図3 介護予防事業の位置付け

 4.一般高齢者
 生活機能低下が認められない一般高齢者に対しては、介護保険法での地域支援事業に依る介護予防事業(介護予防普及啓発事業他)やその他の高齢者福祉施策等が行われます。

このように、高齢者の状態に応じた介護事業・介護予防事業が行われる予定です。

3.新予防給付
 現在は要介護認定を受け、非該当とされた以外の方に対しては介護給付により、介護サービスが提供されます。今後は、新たな要介護認定で要支援1、2とされた方々に対しては新予防給付サービスとして介護予防事業や介護予防サービスが提供されます。(図3)

4.地域包括支援センター
 地域支援事業の包括的支援事業を行う目的で、現在の在宅介護支援センターが廃止され新たに地域包括支援センターが設置されます。長崎市においては、12箇所の地域包括支援センターが委託される事になり、長崎市医師会も一ヶ所の委託を受ける事が決まっています。
 その業務としては、

 1.介護予防事業のマネジメント
 2.介護保険外のサービスを含む、高齢者や家族に対する総合的な相談・支援
 3.被保険者に対する虐待の防止、早期発見等の権利擁護事業
 4.支援困難ケースへの対応などケアマネジャーへの支援

の4つの事業があり示されています。その為、センターには予防・福祉・ケアマネ支援の3つの分野それぞれを担う専門職として保健師等、社会福祉士、主任ケアマネジャーが職員として配置されます。今後、地域支援事業の中核拠点として活動していくものと考えられています。(図1)

5.医療との関わり
 現在でも介護保険において、医療(主治医)の関わりは大事ですが、今後更にその重要性は増してくると考えられます。先ず、介護認定においては要介護認定の二次審査判定に主治医の意見書の記載内容は大きな意味を持っています。更に今回の改訂で要介護1相当の方が予防給付相当か否かと言う判断の根拠として重要視される対象者の方の病態、状態改善の可能性の有無を確認するには主治医意見書の記載内容が重要です。介護を必要としない高齢者の生活機能低下により特定高齢者と一般高齢者とに判定する為のスクリーニングにおいても、健康診査を含め医師の判断が重要になってきます。包括的支援事業を行う、地域包括支援センターにおいても多職種との連携(医療、看護、介護他)を十分に行う事が求められています。又、介護予防事業、介護事業の実施においても運動器の機能向上や、閉じこもり予防、認知症予防他医療との関わりがなければ十分な効果が達成できない事業が新たに行われる事になっています。

6.まとめ
 平成18年4月より介護保険の大きな変革が行われ、高齢者の介護予防という考えより介護・福祉全体の流れが大きく変わろうとしています。その流れの中で、今後更に医療の重要性は増してくる事と思われます。

参考資料
1.全国介護保険担当課長会議資料(厚労省)
2.介護予防に関する事業の実施に向けての実務者会議資料(厚労省)

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